柿田姉弟と日高

中学を卒業しても尚、優一は学校にも行かず引きこもりを続けていた。

一方の恭子は、畠山学園の進学科に入学し勉強漬けの日々を送っていた。



ある日のこと。

何の運命か、恭子は日高真美と出会う。

この出会いが後に柿田姉弟に希望をもたらした。



二人は予備校でたまたま出会い、年齢は違うものの意気投合した。

おそらく、恭子の人を惹きつけるカリスマ性と、日高の慕われ易い人間性があってのもので…。


要は波長が合ったのだ。


恭子は日高に心を許し、弟である優一の話も彼女した。

そして日高が知れば知る程にこの姉弟の話はとても不憫なものだった。

相変わらず親の期待でストレスが溜まる恭子と、人間不信が酷くなる優一。

柿田姉弟の事情を何度も聞いた上で、見かねた日高は遂に双子に手を貸すことにした。



最初はちょっとしたお遊びで。


最終的には双子の幸せの為に。

日高は今まで二人がしてこなかった策を提案した。

それは最近の若者らしい女子ならではのテクニックであった。

まず、優一を出来るだけ恭子に見えるようメイクを施す。

次に目の大きく見えるカラーコンタクトと、恭子の髪質となるべく似たウィッグを探し、それらを付ける。



するとどうだろう。

恭子が二人居る。

そっくりで、似ている。



ここに今まで双子が模索したものをプラスすればもう完璧だった。

すると『もう恐いものはない』とでも言うように優一は見る見るうちに元気を取り戻していった。

恭子もそんな優一と希望を与えてくれた日高に微かな勇気を貰い、次第に笑うようになった。




それからというもの、優一は恭子になりすまし再び学校へ行くようになっていった。

相変わらず恭子は人気者で友人が多い。

優一は次第に学校が楽しくなり、自分も優一として学校へ行きたいと思うようになった。




そして次の年、姉の恭子と一年ズレて畠山学園の普通科へ入学する事となった優一。

時を同じくして、山田や日高も畠山学園の普通科に入学していた。




畠山学園はイジメもなく、比較的過ごしやすい学校だった。

生徒の割合も女子率が高く、昔から恭子として女子と過ごす時間の方が多かった優一には、どこか安心感のある環境だった。

何より、日高真美というかけがえのない友人が今は居る。

それが支えとなり、優一の学園生活はそれなりに安定していた。

だが優一の入学後も双子の入れ替わりは無くならなかった。


入れ替わり続ける事を恭子が望んだのだ。


優一が幾ら今の環境に馴染もうとも、恭子の置かれた環境は変わらない。

優一が少しずつ変わっていく一方で、恭子は追い詰められていた。

風紀委員会に立候補したのも、内申点の為にと親に言われてやっているだけで自分の意志ではなかった。

だから恭子は優一に幾度も自分の役をやってもらっていたのだ。

ある時は放課後の予備校、ある時は昼休みに行われる会議という短い時間、ある時はバレンタインといったイベントごと、果てはまる一日…


自分が面倒だと思う事をたまに優一に押し付けては一人の時間を作っていた。




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