山田行道の報告

「山田ー。土曜のデートはどうだったのよ。」


月曜日、下駄箱付近で日高真美に話しかけられた。

それは最もホットな話題で山田はニッコリ良い顔で笑うと土曜の報告をした。


「よくぞ聞いてくれた、日高真美。俺、恭子とデキたから。」

「………………え。」


たっぷり間を置き日高の表情が崩れる。

この世の終わりでも見たような、何とも言えない顔をしていた。


「諦めろ。俺らの愛はもう誰にも止められない。」

「……は?」

「心配するな。恭子は俺が一生大切にする。山田行道は生まれ変わったんだ。」

「…………は?」


一人ニヤニヤと笑う山田と未だに放心状態の日高。

そんな奇妙な光景に出くわしたのは柿田優一、彼だった。


「何してんだよ。」

「っ…兄弟!おはよう!」

「…誰が兄弟だって?お前の頭もそうだが……日高も大丈夫か。」


そう言った優一の目に映るのは朝から異様にテンションの高い山田行道と何故か固まっている日高真美の二人だった。


「兄弟、今日は一緒に教室へ行くか。」

「…は?」


優一は日高同様の反応を見せた。

変に気持ち悪い山田に白い目を向けてもう一度日高に話しかける。


「おい日高、お前」

「恭ちゃんが!!!」

「ッ!?」

「聞いてない聞いてない聞いてない!ちょ、詳しく!」


日高はハッとし、優一の腕を無理矢理に掴むと走り出した。

一方で…置いて行かれた山田はブスッとふてくされる。

ノロケたくてもノロケる相手が居ないのが非常に不満だった。






山田行道と柿田恭子は付き合う事となった。

それは恭子が出した幾つかの条件を踏まえてのお付き合いだった。


一つ、学校内では一切関わらない事。

二つ、必要以上に束縛しない事。

三つ、付き合っている事を絶対秘密にする事。


これが恭子の出した条件だった。

山田は以前それなりの悪評を流されただけに、風紀委員長である恭子と付き合う事は恭子の評判を下げる事だと理解していた。

それも痛いほどに。

だからこそ山田は恭子を想い、全ての条件を受け入れていた。






まぁそれも少しばかり破ってしまったが仕方がない。

山田行道、この男、最高潮に浮かれているのだ。

山田と恭子をくっつけるキッカケとなった日高に話すぐらい大丈夫だろうと、出会った早々に報告していた。

あれだけ喧嘩ばかりしていた弟の優一を『兄弟』と呼んでしまう程だ。

こうなってしまえばもう誰も彼を止められない。

山田の脳内は気持ち悪いほどにピンク一色であった。




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あきゅろす。
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