03

「二人とも落ち着け…金井に迷惑だ。」

「落ち着いてられるか!俺には金井と話すなとか命令しといて自分は陰でコソコソと…ホントやらしいな!」

「っ…なんでだよ、なんで俺だけ…!俺ばっかり!」

「何が俺ばっかりだ!テメェほんとは金井のこと好きなんだろ!だからってこんな卑怯なことすんな!」


俺は自分のことを棚に上げてそう言った。

よく言うとも思ったが、今までの不満が爆発した。

平村のよく分からない情報とか、手島の改善策とか…そんなのはもうどうだって良い。

俺は俺のやりたいように自由に動きたかった。


「俺は金井が好きだ。」

「っ…!?」

「だからお前に金井は渡さない。写真の件だってまだ許してねぇから。」

「………、」

「お前もう良いわ。いい加減俺ら振り回すの止めろよ。」


平村は黙り込んで部屋から出て行った。

すれ違いざまに思い切り肩がぶつかる。

それにさえ苛ついて舌打ちした。


「吉沢…お前キツすぎ。分かってんのか?」

「分かってる。でももう平村に振り回されるの疲れた。しかも逃げるって事はやっぱり後ろめたい事があるんだろ?」

「……分かった。」


手島は俺を一瞬睨んで帰っていった。

多分平村のあとを追ったに違いない。

分かってる、だけど今は自分の事を優先したかった。

俺は俺の気持ちと…金井に向き合いたかった。


「いきなりごめん。でもこれが俺の気持ちなんだ。」


ドアを閉じて部屋へ入る。

そしてドアに背中を預けた。


「ホントに?でも、だって、吉沢君は同性とか考えられないって、」

「金井は特別なんだ。」


俺はもうクヨクヨするのを止めた。

嫌われるかもしれない…なんて馬鹿らしい。

例え嫌われていたって金井は特別だし、これからもきっと好きで好きで堪らない…憧れの人なんだから。

この気持ちを伝えたかった。

金井に知ってて欲しかった。


「うそだよ…、」

「本当だ…それとも迷惑か?」

「そんな事ない…僕は…、」


金井は俯いて、信じられないって顔をした。

だけど本当なんだ。

信じて欲しい。


「ごめんね…。」

「っ……、」

「平村君の悲しい顔は見たくない…。」

「平村が、好きなのか?」


もしそうだとすれば…俺は益々平村を避けたくなった。

そんなの俺が耐えられない。


「違う、平村君が悲しい思いをするって分かってるのに…だけど、」

「……。」

「吉沢君が好きなんだ。」


そう言って久々に金井は俺を見た。

綺麗なヒマワリのような茶色い瞳が潤んで俺を見てる。

それだけでも倒れそうなのに、なんて甘い言葉だろう。

俺は金井を抱き締めたくなって…だけどその瞳をまだ見つめていたいと思った。


「うそ…」

「本当だよ。ずっと、昔から好きだった。憧れてた…、」

「そんなの俺だって、ずっと憧れてた。」


二人して嘘みたいって思う。

死にそうなくらいドキドキして、死にそうなくらい嬉しかった。




あきゅろす。
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