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「金井が同性に好意を好かれるのが嫌いとか…目が合っただけで睨まれたとか…そんなんだったかな?」
「ほぅ、それはそれは…あれだけ綺麗だとそんな悩みがあるんだな。」
「……。」
「手島?どうしたよ?」
「いや…他に気になる点は?」
考える素振りをしながら、尚も聞かれる。
気になる点…そうだな。
今一番気になってるのは…。
「平村は金井のことが好きかもしれない。」
「は?」
こんな事言いたくない。
俺だってずっと片想いなんだから。
でも何となくそんな気がする。
「何でそう思う…。」
「だってよく目が合うとかこの間2人で勉強したとか…そんな事わざわざ俺に言ってきたんだぜ?オマケにさっき一緒に下校してたしよー。」
またムカムカしてきた。
俺だって金井と帰りたいし話したいし勉強したいし、と言うか2人っきりになりたい。
俺なんて自動販売機の前で会った以来会ってないのに。
そうだ…。
「平村が苦手だって金井が言ってた。男に好かれるのが嫌なら、平村に好かれてるかもしれないから苦手って考えるのが普通じゃね?」
「ならば、何故先程二人は並んで帰っていったんだ。可笑しいじゃないか。」
「それは…。金井が優しいだけだろ。」
きっとそうに違いない。
本当は苦手なのに、俺に言った通り平村を克服するために頑張っているんだ。
そうに違いない、絶対そう。
「分かった。ただな、お前が持ってる情報は人伝に…しかも平村というアホから聞いた噂程度のものなんだ。鵜呑みにすんなよ。」
「分かってるって。だから今まで誰にも言わなかったんじゃねぇか。」
「…あぁ、確かにそうだ。金井が告白されたと言う話は今まで一度も聞いた事がないな。言い寄られてそうではあるが…近付きがたい印象の方が強いと思わないか?」
犀川に言われて暫く考える。
金井は綺麗でモテるだろう。
でも浮ついた話は聞いた事がない。
北原が現れるまでは誰も話しかけず、陰ながら見ていたのだから。
そんな金井が好意を向けられて困っているとは確かに思えない。
「嘘なのか。」
「……。」
「平村あいつ…やっぱり金井が好きだからワザと俺に嘘吐いて出し抜こうと…。そう言えば写真だって俺と金井が二人で写ってんのに嫉妬して…あ!」
「どうした?」
「そう言えばアイツ、俺らが二人で写真取った時に自分も入りたいとか言ってな!しかも後から画像消した方が良いとかやたら言ってたし…あーやっぱそうだわ!」
「そうか。そして吉沢も金井を好きなんだな。」
「え?」
やっべ!
完璧に墓穴掘ったわ!
俺は顔を手で覆った。
俺キモイ、最悪、墓場まで持っていくつもりだったのに…!
そりゃあわよくば仲良くなって何とか良い感じになって恋人…って妄想までしてたけどさ!
「まぁ気付いていたがな。」
「マジかよ…。」
「やっぱり好きなのか。知らなかったぞ。」
「っ…テメェ、犀川の分際で俺を騙しやがったな…。」
ワナワナと手を震わせる。
嵌められた。
コイツ…しかも真顔で嵌めやがった。
「お前らの恋愛事情はともかくよぉ、平村が嘘吐いてるってお前は思う訳だな?」
「いや…そうとしか考えらんねぇだろ。」
「……。」
「つーかずっと何考えてんだ?何か知ってるなら今度はお前の知ってる情報寄越せ。」
「ねぇよ。あったらとっくに言ってるわ。」
「…役立たずが。」
「殺すぞテメェ。」
メンチをキレられた。
手島…お前は本当に学内一の成績保持者なのか。
たまに疑いたくなる。
「何とか穏便に済ます方法はないだろうか。こちらとしても結局は想像の域で話してるに過ぎないのだから。」
「でもなぁ…。」
「平村と喧嘩別れがしたい訳ではないだろう?」
そうだよな。
嘘って決まった訳でもねぇし、難しいわ。
俺が決断を渋っていると、手島がハッとした表情で俺を見た。
何だ?
何か名案でも?
「お前…さっさと許せ。そんで今度はアイツが金井に目いかないようにお前が相手してやれば良い。そうすればあの馬鹿も変な動きは取らねぇ。」
「…断言出来るか?」
「百とは言えねぇが出来る。」
手島が何を思ってそう自信を持って結論づけたか分かんねぇが…。
なるほど。
金井に意識がいかないようにしとけってことな。
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