20枚目

あれから僕は手島君の言う無意識に隠れた本心について考えていた。

手島君から見れば嘘の塊であるらしい平村君。

だけど彼にも本心があって、何気ない瞬間にそれが見えるに違いない。

僕は次の日、昨日と変わらない状況の吉沢君達を盗み見ていた。


携帯を弄ったり、眠ったり…平村君の本心は見えない。

やっぱりこんな観察程度で分かる訳がないよな…と思っていたら、振り向いた平村君と目が合った。

すると少し笑ってから立ち上がってこっちに来た。


え?こっちに来るの?何で?


「かねたーん。俺ってそんなに魅力的〜?」


ふわっと笑われて急いで目を逸らす。

かねたん…ニックネーム…?


「逸らすなんて酷いなぁー…ちょっと頼みがあるんだけど後で時間貰えない?」

「…僕に?なんで?」

「後で話すよ〜。」


多分、ニコニコ笑ってる。

どんな表情なのか簡単に想像がついた。


「それよかお前ら大丈夫か?つーか平村しでかしすぎな。」

「あ〜…事故だったんだけどねぇ、でもお許しが出るまで粘って謝るよ〜。」


今度は困ったような顔。

そっか、何となくパターンが決まってる気がする。


「平村君って。」

「ん?なにぃ〜?」

「何の画像消したの?」

「うーん…良く覚えてないなぁ。事故だったし。」


嘘。

僕と吉沢君の写真。

それを知っていて言わない。


「そっか…。この時期に喧嘩だなんて、早く仲直り出来ると良いね。」

「ッ……。」


あ…やってしまった。

気付いた時には既に遅かった。

平村君と目が合った僕は硬直する。

だって、平村君が…


「平村どうした?」

「う、うん…何でもないよ…ちょっと、」


傷付いた顔をしていたから。

今度は泣きそうな顔で北原君に話しかけている。

前と一緒だ…。

僕を陥れようと企んでの演技…。


「…平村君、あのさ…ー」

「そろそろチャイム鳴るよね?もう席戻るー。」


ビクビク怯えるように席へ帰っていった。

本当に…困った。


「平村…急に変だよな、」

「……。」


平村君が嘘吐きだとは言えない。

平村君の為にも、僕自身を守る為にも。


「平村君と僕…」

「ん?」

「性格が合わないみたいなんだ…」

「…そうなのか?」

「うん…あぁやってたまに怯えられるんだ、何でか分からないけど。」


僕は変に拗れる前に話せる範囲で話しておく事にした。

全てを話せなくても、最低限の対応ぐらいはしておかないと後が怖い。


「珍しいな。金井に怖がる要素なくね?」


僕だって平村君があんなに複雑な人間だなんて思わなかったし思いたくもなかったよ…。

人は見かけによらない。


「分かんないよ?実はコワーイ人間かも?」

「フッ…とうとう冗談言うようになったんだな。じゃあ怖がらせてみせろよ。」

「…無茶ぶり。」

「はい怖くねぇー。むしろ癒やしー。…まぁ平村は……美形恐怖症とか?でも平村自身がイケメンだしな…。あ、それとも中性的な美形恐怖症とか。」


僕は思わず吹き出してしまった。

結構真剣な話題だったんだけどなぁ…。

北原君だったら平村君の嘘になびかずに、僕の事を信用してくれる気がする。


「とにかく気にすんな。後で何が怖いのか聞いてやろうか?絶対勘違いしてんだわアイツ。」

「大丈夫だよ、ありがとう。もう…北原君の気持ちだけで充分。本当に友達で良かった。もう…北原君最高だね。」

「何突然!俺今日死ぬの?別れの言葉?いくら持ち上げても俺に財産はねぇよ!」

「ふふ、何それ。」


二人して笑った。

本当に、本当に嬉しくて安心した。




あきゅろす。
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