16枚目
平村君の訪問から数日後、クラスに変化が起こった。
「あれかなりヤバくね?」
「うん…珍しいね。」
いつもは騒がしい平村君達が全く騒いでいない。
吉沢君は机に突っ伏し、手島君は参考書を開き、平村君は携帯を弄ってる。
朝からあんな感じで、授業中は勿論お昼まで会話をしていない。
唯一平村君と手島君だけは何度か話していたけど、吉沢君はお昼になるとどこかへ消え、放課後も二人を待たずに帰ってしまった。
それに続いて平村君が暗い顔で教室を出て行く。
クラスの皆も午後にはその変化に気付き、これは相当揉めてるに違いないと隅々で話していた。
「こんな時期に喧嘩とか…よくやるよな。」
「……。」
平村君の事もあったし僕が言える立場ではないけど…確かにそうだな。
卒業まで後半年もないのに。
「手島。お前達大丈夫なんだろうな。」
「…分からん。」
皆気を使って何も聞かずに帰っていく中、犀川君が堂々と質問をした。
気になった僕達も釣られてその話に入る。
「どうしたよ。見た感じだと平村が何かして吉沢が怒ってるっぽく見えるけど。」
「北原は鋭いな。見たまんまだわ。」
北原君凄い…。
それにしても、あれだけ怒るなんて平村君は何をしたんだろ…。
相当凄い事をしでかしたに違いない。
「平村がな…不注意でデジカメの画像消しちまって。」
「え!?全部か?」
「いいや、一枚。」
一枚?
だったらそんなに怒るほどじゃ…。
「お前らとっちゃたかが一枚でもアイツにとっては他には変えられない大切な一枚だったんだろうよ。」
その言葉を聞いて胸が苦しくなった。
僕にも大切なものをなくした経験はある。
写真なんて一瞬を切り取ったものだから余計に悲しいと思う。
「理解してても今はまだ余裕がねぇんだよ。落ち着くまではそっとしといてやって。」
それなら仕方がない…。
平村君もわざと消した訳ではないだろうし…。
「ちなみに消えた画像ってどんなやつ?」
「あ?それは…」
手島君は北原君の質問に考える素振りを見せて一瞬チラリと僕を見た。
まさか…なんて思う。
でも。
平村君ならやりかねない。
「俺も分かんねぇ。」
「そうか。しかし相当大切だったんだろうな。」
「まぁ高校ラストだし余計にな。」
犀川君も北原君も納得したように話す中、僕だけはさっきの視線に意味がある気がしてならなかった。
僕が手島君を見つめていると目が合って「俺らも帰るか」と呟いた。
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