14枚目

「こんな風に、誰かに本音を話すのは金井君が始めて。吉沢でも、手島でも話した事はない。」

「……。」

「俺ね…金井君が吉沢と話してるのを見たくないんだ。」

「…どうして?」

「自分でも分からない。でも、とにかく嫌だ。二人とも大好きなのにね。」


困ったように…泣きそうな表情で話すのを見て、僕の胸も痛くなった。

いつも笑っていた平村君がこんな顔をするなんて…よっぽど悲しい事なんだ…。


「だから、俺と仲良くして欲しい。嫌いにならないで欲しい…。」

「……、」

「前は言い方がキツくなって怖がらせちゃったと思う…けど、本当は仲良くなりたかっただけなんだ。自分の知らない感情に混乱してあんな態度になっただけで…」

「平村君…、」

「俺、金井君となら良い友人になれると思う。今までの事は本当にごめんなさい。ダメかな?」


思いがけない申し出に迷う。

平村君の望みは僕と友達になる事。

同時に吉沢君とは話して欲しくないという事。

難しい選択だ。


「我が儘言ってるのは分かってる…だけどこんな事言えるのは金井君だけで…。」

「三人で仲良く…なんて、」


それが一番の理想だと思う。

僕も平村君も吉沢君も皆で仲良くすれば良いだけじゃない?


「………。」

「勿論、北原君や手島君だって…」




「それじゃ意味ないって。」


え…?

一瞬、ギロリと睨まれた。

驚きの余りビクッと反応したら「ごめんね」と急いで泣きそうな顔で謝られた。


「………。」

「とにかく、俺の気持ち…誰にも言わないで、金井君だけは知っていて欲しい。」

「…うん。」


お大事に、最後にそう言って平村君は出て行った。

本当、心臓に悪い…。

寿命が縮む思いだ。




「意味がない…か。」


僕にだけ本音を話しにきたというのが本当なら、相当な思いでここへ来たはず。

その思いを無駄にする事も出来ない。

色々と考えてみる。



そうだな…平村君と険悪なまま卒業するのも嫌だ。

それに嫌われてる訳ではなかった。

ただ僕と吉沢君の関係に何故か良い気持ちになれないだけで…。






吉沢君には…気持ちを伝えるつもりはない。

見てるだけで良かった、最初から。

なら…今まで通り何も望まず、憧れの人として見つめて過ごすだけ。

それが良い。

きっと、それが良い。



一番最もらしい結論を付けて、でも、心の一部はモヤモヤと嫌なくらい曇っていた。




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