13枚目

吉沢君に勢い余って色々言ってしまったけど大丈夫だろうか。

今更ながら心配になってきた。

吉沢君を信じてない訳じゃないけど…仲が良い友達ならばポロッと言いかねない。

怖い。

バレたら全てお終いなんだ。





その日以降、僕はどこかビクビクしながら過ごした。

強迫観念っていうのかな。

いつバレるんだろうって怯えて過ごして…常に二人を気にしていたら、どんどん体調が悪くなっていった。

試験の最終日なんてもう最悪。

精神的な疲労から心も身体もボロボロで、それでもなんとか試験を受けた。

試験が終わった後の記憶は曖昧であまり覚えていない。

ただ、北原君に支えられながら早退し、酷く迷惑をかけたのは覚えている。




あれからもう4日間は学校へ行っていない。

僕は気怠い身体をベッドに預けてボーっと宙を見続けていた。

体調は少し良くなったと思う。

一時は食欲もなくなって、治まらない高熱と吐き気に苦しんだけど。

今はそれなりに食事が喉を通るようになったし、熱も下がった。

まだ気怠さが身体に残ってはいるけど、前よりは随分マシだった。


「疲れた…」


寝るのも大変だ、という独り言がポツリと消えて耳に残る。



部屋の扉を叩く音が聞こえた。


「今日は早いなぁ…、」


僕が休んでる間、北原君は毎日看病をしてくれていた。

だからここへ来るのは北原君だろうと単純に考え、確認もせず開けてしまった。


「……。」

「………。」


扉を開けると平村君が居た。

何も言わず、部屋に入ってくる。

ちゃんと確認すれば良かった。


「…調子、どう?色々買ってきたんだけど…。」


ゼリーやらフルーツやら色々入った袋を渡される。

心配そうな顔で僕の様子を窺ってきた。


「ごめんね。来たのが吉沢じゃなくて…、」


平村君の口から吉沢君の名前が出るだけでザワザワと胸がかき乱される。

苦しい。

今度は何を言われるのか、そう考えるだけで怖い。


「今日は何か…、」


俯いて聞く。

もう戦闘力はないに等しい。


「こんな時に何だけど…もしかしてここ数日で吉沢と会った?」






バレてる…?

僕が体調を崩した原因の確信をついてくるような発言にドキリとする。

怖い。

平村君が、怖い。


「…来てないよ。」

「そ。なら良いんだ。」


怖い、ただただ怖い。

平村君は些細な変化にも敏感だから、本当に信じてくれたか疑わしい。

僕はフラフラと椅子に座って身体をさすった。



帰ってくれないかな…。





「…俺ね、欲張りなんだー。」

「…え?」

「欲しいものは全部欲しい。煩悩まみれ。」


急に突飛な事を言われて身構える。

そしてどんな顔で話してるんだろうと顔を見ると、無表情で僕を見ていた。

こんな顔…始めて見る。


「金井君単体なら嫌いじゃない。むしろ好きだな。凄く好き。ずっと一緒に居たいぐらい。」

「……。」


急な告白に驚く。

しかも…嘘を吐いてるようには見えないから更に驚いた。

まさかこんな風に言われるなんて…。




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!