12枚目
(side:吉沢)

いつもの面子で勉強会をした後、部屋まで引っ付いてきた平村と勉強をしつつダラダラと過ごしていた。

気紛れで始めたゲームで負け、罰ゲームとしてパシリの刑をくらった。

そんな経緯で夜な夜な飲み物を買い出しに行った訳だが…。


平村に頼まれたジュースを押した時に誰かの気配を感じ、視線をやれば金井が居た。

目を合わせまいと決めたその日のうちに出会うなんて…。

俺は嫌われたくない一心で目を逸らした。

なのに金井は「吉沢君、こんばんは。」なんて話しかけてきて…。

無理すんなよとか、俺は誤解を解きたいんだとか、話し掛けられて嬉しいだとか、沢山の思いを秘めながら会話をした。



しかし話せば話すほど妙に何かがズレていき…その原因が発覚した。


「僕、平村君の事、正直今でも苦手だけど…克服出来るように頑張るね。」


話がどうも噛み合わないと思ったら、平村も金井も色々と勘違いしていたようだ。

金井に言わせてみれば平村は金井を嫌っていて、金井は平村を苦手としている。

しかし平村にしてみれば、金井が俺達を嫌っているようで…。

あーっ!ややこしいな!

とにかくアイツらは何かをそれぞれが勘違いしているに違いない。

二人の会話を聞いた訳でないので何とも言えないが…本当抜けてるコンビだな。





俺は少し冷めたコーヒーを暖めながら部屋へ帰った。

それに…平村が金井を嫌っているという情報も信じがたい。

アイツが誰かの悪口を言ってるのを聞いた事がないし、誰にでも優しい奴だ。

そんな平村がよりにもよって金井を嫌うか?

逆に好きだと考えた方が納得が行く。

平村から貰った「男に好意を向けられたくない」の情報が正しいとすれば…。

俺以上によく目が合うらしい平村を金井が苦手としているとすれば…。

妙に納得がいく。


「お帰りー、遅かったねぇ?」

「お前のお望み通りパシってやるのは不満だからな。ジュース暖めてやったぞ。」

「最悪!だけど…吉沢くんの…体、温…。」

「気持ちわりぃ言い方すんな。」


つーか…平村の性格上、色々間違って伝わってる可能性が非常に高い。

まぁ、何が本当なのか分からない今は何も言わずどちらの発言も信じるしかないかもな。

そのうちどうにかなるだろ。









「なんかあった?」

「…え?なんも?」

「……そっかぁー。…てかマジでジュースぬるい、最悪。」


その後もブーブー文句を言われたぐらいで特に気になる様子はなかった。




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