02枚目
「北原、金井。お前らに話がある。」
落ち着いたのも束の間。
手島君に話し掛けられて少し背筋を伸ばした。
折居ってなんだろう…。
「実は卒アルに載せる写真なんだが、お前らのがあんまりねぇんだ。前に体育祭で撮ったのは大人数過ぎて使い辛いっつーか。」
「そうなんだ…。」
「だから文化祭中に何枚か撮らせて欲しい。」
「了解。格好良く頼むな。」
「…知らねぇっつの。ワックスでも付けてろ。」
フッ。
手島君の呟きに思わず笑ってしまった。
「卒アルだけワックス付けてたらキモイだろ。」
「キモイな。じゃあ後で宜しく。」
バッサリ切られた北原君はしょんぼり眉を下げた。
うん…手島君らしいっちゃらしいね。
その後は小西君もクラス支給のエプロンを着用し、予定通り学祭が始まった。
僕と北原君、小西君は同じ時間に当番で僕としてはやりやすかった。
それに二週間前の出来事が嘘みたいな日常で内心ホッとしている。
あれから平村君と話す機会もないし、それは同時に吉沢君と話す機会がないと言う意味でもあるけれど…
変に嫌な思いをするよりマシだと感じていた。
「ブルーハワイで。」
だけど今日は文化祭なのだ。
カメラを片手に目の前に立っている吉沢君にブルーハワイのかき氷を渡す。
自分のクラスなのにちゃんとお金を払う所を見て少しキュンとしたのは秘密。
「金井君お疲れ〜。俺はイチゴと練乳でよろしくー。」
平村君。
こうやって対面するのは二週間ぶりだ。
僕は平常心を装いつつかき氷を用意した。
「大盛況だねぇ〜。」
「そうだね。」
「あれー疲れてる?俺当番代わろっか?」
「大丈夫だよ。はい、イチゴ練乳です。」
「ありがと〜。……かき氷も誰かさんも冷たいな。」
最後に耳元でボソッと言われた言葉にゾッとした。
だけど平村君は何事もなかったかのようにスルリと次の人に場所を譲り、吉沢君の居る所に早足で行ってしまった。
終わってない。
始まったんだ。
そんな言葉が頭を過ぎって気分が悪くなった。
▼▽
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!