05
次の作戦に出ることにした。
制裁はするな?僕に相談しろ?馬鹿馬鹿しい。
僕はまず、松坂君に話を持ち掛けた。
会長の親衛隊には派閥が2つ存在する。
一つは天野彼方を支持する温厚派。
もう一つは松坂君と真木君を支持するアンチ天野派。
でもほとんどは天野を支持していて、松坂君達を支持しているのは幹部の面々がほとんどだった。
天野は高等入学で、しかも一年前にいきなり隊長となった。
そんな横入りしてきた人間が、中学時代から幹部として活躍してきた彼らに批判されるのは仕方がないことだった。
「天野隊長、邪魔じゃないー?」
「…なにする気?」
「別に、天野隊長には何もしないよぉ?ただ僕らは天野隊長の言われた通りに動くコマになれば良いんだ。」
作戦は至ってシンプル。
編入生の田代に制裁を加えて、後から全部天野の責任にすれば良い。
僕の説明を聞いた松坂君は楽しそうに笑って、僕の案に乗ってくれた。
後日、話を聞いた真木君も参戦して、次はメンバー集めに取りかかった。
「姫路、メンバー5人集まった!皆アンチ天野だし楽勝。」
「これで天野隊長の立場も無くなるね。」
松坂君も真木君も嬉しそうで何より。
計画は完璧で、あとは実行するのみだった。
「お前ら誰だよ!」
「さぁね〜、恨むなら天野隊長を恨んで。」
「僕らは天野隊長の言われた通りに動いてるだけだし。」
「だからごめんね。」
上から田代、僕、松坂君、真木君。
呼び出しは成功、そして後ろのメンバーが田代に襲いかかった。
僕ら三人は笑いながらその様子を見る。殴る、蹴る、実に愉快だ。
「何してる!!!」
風紀の見回りに見つかった。
まだ序盤なのに…ムカつくムカつくムカつく!
顔を見れば風紀委員の神谷君だった。下っ端の癖に。
「君ら、制裁はしないように指示されてるはずだけど。」
「いーえ。これは天野隊長のご指示通りです。」
「……嘘。」
「嘘なわけない!ほんとだよ!」
神谷君は泣いている田代の様子を確認しながら電話をかけた。
数分後、風紀委員長の野々村正義が現場にくる。
そして泣いている田代を見るなり般若のような顔で僕らに迫ってきた。
「祥平っ…、テメェら!!」
「委員長落ち着いて。話は風紀室で聞こう。」
「お前ら…ぜってぇ許さないからな。」
田代は祥平と言うらしい。
それより、怒った委員長はめちゃくちゃ怖い。
神谷君が止めてくれなかったら僕ら殺されてたかも…。
風紀室には僕らと風紀の人達、生徒会が集まった。
思ってたよりも大事になって僕は凄く怖くなる。
だけど大丈夫、大丈夫…だって天野が悪いんだから…。
「お前たちは田代祥平に制裁を加えたな。」
「はい…。」
「主犯は誰だ。」
野々村委員長のドスの利いた声にドキドキしてきた。
手が震える。バレるのが恐くて声が出なかった。
「天野隊長です。」
しかし、隣に座る松坂君がハッキリとそう言った。
少し安心する。松坂君が居て良かった。
「そんな訳ないだろ!アイツ、制裁やめろって言ってたはずだし!」
松坂君の主張に声を荒げたのは風紀委員の刈屋君だった。
彼は天野彼方の唯一の友人で、たまに一緒に居るのを見かける。
それにしても…空気が重い。生徒会の皆様はだんまりで深く考え込んでいた。
青柳様の姿は恐くて見れない。
「あくまでも"はず"でしょ?確かに天野隊長は僕らに指示しました!ね、真木?」
「はい。僕らは指示通りに動いただけです。」
「…柚希、天野を呼べ。」
野々村委員長が指示を出す。
風紀の副委員長である泉川柚希様は、天野に電話をかけた。
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