02


「副隊長には松坂君を任命します。」


パチパチと手を叩く天野に乗せられ、親衛隊メンバーの拍手が部屋の中で響き渡る。

僕は自然と周りから押されるようにして前へ出た。


「どうぞ、ご挨拶を。」


今までクラスメートでしかなかった天野彼方。

彼とちゃんと対面したのは、この時が初めてだった。


「なんで…、」

「松坂君、挨拶を…」

「っ…なんでですか隊長…!何で途中から入った天野が隊長なんですか!」

「松坂…落ち着いて。」

「だって…!」


僕は並木隊長を睨み付けて叫んだ。

それからは隊長に宥められ、無理やり並木隊長最後の挨拶へ移る。

僕は納得出来なかったけど隊長の考えを無碍にも出来ず、その場は無理やり我慢した。





「並木隊長…説明して下さい。僕にも真木にも分かるように。」


解散後、僕と真木は隊長を捕まえて詰め寄った。

だって納得いかないだろ?

どう考えても僕らの方が適任だよ。


「松坂、君は鳴海が好きなんだよね。」

「そんなの…当然です。」


何を今更と思った。

好きだからこそ親衛隊に属していて、今だってイライラしていると言うのに。


「君にとって鳴海は特別な存在だ。じゃあ親衛隊はどうだろう?例えば親衛隊の仲間の誰かが鳴海と仲良く笑っていたとする。その時君は笑って喜んであげれるかな?」

「それは…」


僕は想像した。

親衛隊の誰かが鳴海君と仲良く笑ってる。

それを僕は見ているだけ。

想像だけでも嫌だった。

上手く笑うことなんて出来ない。


「できます…。」

「そんな風には見えないけど。」

「……。」

「松坂のそう言う所…正直な所が大好きだ。嘘がつけなくて、いつも一生懸命な所…笑えないことは決して悪いことじゃない。だけど隊長には出来ないんだ。ごめんな。」


困ったように笑う並木隊長に僕は唇を噛んだ。

並木隊長の言いたいことが少しでも分かったからだ。

確かに天野は器用でいつも笑っている。

きっと鳴海君と誰かがくっついても笑って祝福するのだろう。

その様子がすぐに想像出来た。


「真木もごめんな…。君達のことは本当に可愛いと思ってるし、出来ることなら引き継いで欲しかった。でも隊長である以上、私情を挟まずに冷静な判断を下さなければならない。天野もきっと、これから苦しむと思うよ。」


僕も真木も俯いて、納得したように頷いた。

並木隊長が僕らの頭を優しく叩いて去っていく。

僕はこの時決めた。

どんな時も笑える人間に…並木隊長に認めてもらえる人間になろうと…。





あきゅろす。
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