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つくづくと思う。

僕と天野彼方では何もかもが違うのだと。

考えも感性も真逆で、天野を知れば知るほど心が交われなかった。

だからもういっそのこと消え失せてくれたなら何だってすると、いつしかそう考えるようになっていた。

最初はただ、天野を自分の思う正しい道に導きたかっただけなんだと思う。

副隊長という称号を持つ者として、彼の一番近い存在として、出来る限りの力を発揮したかっただけなんだと思う…。





「ねぇねぇ松坂くん、最近の鳴海様は更に格好良くなったと思わない?」

「分かる分かる!もうすぐ先輩から引き継ぎだし、お互い引き締めていこう!」

「だね!」


僕と真木は中学時代からの親友だった。

元々は同級生の鳴海要、現生徒会でもある彼が格好いいという趣味の一致から意気投合した。

そして中学二年生の頃には彼の親衛隊が先輩達により結成され、僕達は喜んで親衛隊へ入隊した。

それから数年、先輩達が高校2年生へ上がると同時に新しい隊長が言い渡されることとなっていた。

周りの反応を窺っていると、どうやら容姿も良くて昔から熱心だった僕と真木の二人が隊長、副隊長の候補に上がっているらしい。

もちろん自分達でもそうなるだろうと思っていたし、確定だと信じていた。


「鳴海要。彼の新しい親衛隊隊長には天野彼方くんを任命します。」

「えっ…。」

「では天野くん、前へ。」


だけど予想すらしていなかった宣告を僕らは言い渡された。

唖然と立ち尽くしていると、初代隊長である並木隊長の誘導により天野が前へ出てくる。

その時の天野は驚いた様子も動揺もなく、当然のように挨拶を始めた。


「並木隊長から引き継ぐこととなった天野彼方です。」


僕は当然自分だろうと思っていたし、親衛隊のメンバーもまさかの人選にざわめきだす。

しかし天野が綺麗な顔でニコリと微笑むと、今までのざわつきが嘘のようにピタリとなくなった。


「僕が隊長に任命されたことに疑問や不満を持つ方も居ることでしょう。しかしこの学校での在籍年数が少ない僕だからこそ対応出来る問題もあるでしょうし、並木隊長の気持ちを汲んで今回引き継ぐこととなりました。」


僕は信じられない目で並木隊長と天野を見る。

それはやはり、隊長直々にそう言ったということだ。

余りのショックで固まる僕の心を置いて、天野は無情な挨拶を続ける。

何の言葉も耳に入らなかった所、次は副隊長の発表に移った。





あきゅろす。
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