02
「大聖…。」
「はいはい。」
現在生徒会室。
こちらは春の訪れで桜の花が満開です。
こんな実況をしたくなるのには訳がある。
例の騒ぎの後、ようやく城本と青柳が両想いとなった。
城本は凄く分かりやすいもので、青柳は名前を呼ばれただけで何の用事か把握している。
まるで熟年夫婦のようで笑っちゃうね。
「熱い熱い。これじゃ今年はエアコン要らないかな?」
「っ…い、いるよ!俺らそんなにイチャイチャしてない!」
「へぇ、俺らかぁー。」
「椿クン…!もう黙ってて下さい!」
顔を真っ赤にして怒る青柳は可愛い。
この二人をネタにしてからかうのは最近のブームだった。
二人共純情だから、反応が面白くてついイジっちゃうんだよね。
「お疲れ様!」
純情と言えばこの子もそう。
田代祥平くん。
「要なら今は居ないよ。」
「ふ〜ん。そっか。」
「すぐ帰ってくると思うけどね。」
入ってきて早々にキョロキョロと目を動かす祥平に声をかける。
誰の存在を探し、動向を気にしているのか?
話さなくても目に見えて分かった。
肝心の生徒会長様のお気持ちはよく分からないけれど。
「あ、要!どこ行ってた?」
「ちょっと風紀までな。」
要が戻ってくるや否や祥平は弾けたように明るい声を出した。
分かりやすいなぁ…。
生徒会はしばらく安泰って感じ?
「晩ご飯一緒に食べようぜ!」
「ん、分かった。仕事終わるまで待ってろ。」
「おう!」
言われた通り静かに待っている祥平は、天真爛漫で純粋で凄く可愛かった。
弟の居ない僕だけど、弟が出来ればこんな感じかなぁ…と思わせてくれる人懐っこさがある。
こっちも早くくっ付けば良いのに、なんて思いながら要を見る。
そうすれば面白いネタが増えるのにね。
「ちょっと椿クン…考えてること顔に出てるよ。」
「あらら…それは気を付けないと。」
青柳に笑いかけると不満げな表情をされた。
皆大概分かりやすいけど、僕もそうなのかな?
「そうだ椿。柚希とまた喧嘩でもしたのか?」
「え?してないけど…何で?」
思い出したように言う要に疑問をぶつけた。
最後に話したのは昨夜で、何故か兄弟としてはいられないと意味不明な言葉を言い残して出て行ったきりだ。
僕は意味不明とは言ったもののそれ以上は何も言ってないし、そもそも喧嘩という喧嘩はしてないはず。
「アイツ今日は椿の話題を出さなかった。いつも風紀に行くと必ず聞いてくるのにな。」
「初耳なんですけど…。どういうこと?」
「そのまんまだ。何だかんだで椿と一番一緒に居るのは俺だからな…。会う度に近況報告をさせられる。」
「それいつから…?」
「お互いに風紀と生徒会に入ってからだな…。書類関連で会う機会も増えたし、その時に。」
知らなかった…。
昔からユズは必要以上に束縛してくると思ってはいた。
それが知らない所で地味に続いていたのは驚きであり、でも今のユズならやりかねないと溜め息が出た。
「アイツ、お前のこと好きすぎるよな。」
ニヤリ、我が会長様が笑った。
「はぁ?そんな訳ないでしょ…。」
そうです、とは言わずに一応否定しておく。
いくら和解したとはいえ、まだ兄の存在を認めたくない部分もあった。
それに自分が話のネタにされるのだけは永久に避けたい。
「いーや。柚希の嫉妬ハンパねぇから。俺なんて何回睨まれたか。マジおもしれぇわ。」
「……。」
「あ!俺も柚希クンに睨まれたかも。」
「そう言えば俺もあったな…。あれ泉川が原因だったのか…でも何でだ?」
要だけならず青柳や城本にまでそんな被害が…。
あまりにも酷い現実に何も言えなくなった。
つくづくと思う。
兄がめちゃくちゃウザイです。
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