04
「俺…セフレいるんだって、」
「……居ないだろ?」
「でも皆いると思って俺に期待してる。馬鹿みたいだな…、」
ハハ…って乾いた笑いが漏れた。
こんな嘘に振り回されて惨めだった。
俺は普通に過ごしたいだけなのに。
「無理して笑うなよ。」
「…笑わないとやってられない。」
「じゃあ俺も笑う、あいつら馬鹿だな!ハハハ!」
文也クンはめちゃくちゃ下手くそに笑った。
台詞を読むような棒読みで少し元気が出る。
「下手くそ。」
「…悪い。ハハハ。」
「だからそれが下手なんだって。」
「悪かったな不器用で。俺かって大聖ほど器用に笑いたいよ。」
不機嫌そうに返されて笑ってしまう。
耳が少し赤くなっていて更に元気が出た。
不器用だけど一生懸命な文也クンが好きだとやっぱり思った。
「ありがと。」
「大聖は…純潔だからな。」
「プッ…言い方でしょ?」
「大聖の純潔は守り抜く!」
「何それ?じゃあ俺一生誰ともエッチ出来ないね?」
笑いながらそう言うと文也クンが固まった。
顔を覗けば盲点だった…という顔。
分かりやすいな…そこが良いんだけど。
「ま、まぁ…相手によるよなー。セーフな奴とそうじゃない奴。」
「誰それ…文也クン的に誰ならセーフな訳?」
文也クンは俺の顔をチラッと見て急いで目を逸らした。
口を手で覆って照れているのが分かる。
「俺…とか?」
「っ…文也クンこそ本当に純情だよね。」
「悪かったな!むしろ俺は純情だからこそセーフなんだ!」
「そこ威張るんだぁ〜。」
あぁ、良いなぁ…なんて思う。
まだ完璧な答えは口から出せないけど…文也クンのこういう所が好き。
凄く好き。
「ありがとう。なんだかもう…文也クンさえ信じてくれたら良いって思えてきた。」
「っ……、」
「生徒会の皆も祥平クンも…側にいてくれて良かったよ。俺は良い友達を持った。」
「…いや、そうだな。」
文也クンは少し傷ついた表情をする。
俺が生徒会の括りに入れて友達だって言ったから…。
今はまだ怖かった。
変わるのは怖い。
唯一の平穏が、今の形が変化することを俺は一番に恐れていた。
大切なんだ…だからこそゆっくり変わっていきたい。
「ごめんね…。」
「いや、大切に想ってくれてるんだろ?それだけで充分だ。」
嘘つき…傷ついてる癖に。
自分でそんな顔をさせた癖にその優しさが不満だった。
拒んでおいて求めるなんて変だよね。
俺って変だな…。
「何か食うか?‥と言うか晩飯は一緒に食おう。」
「文也クン…。」
俺は台所に立ってお茶を淹れる文也クンに後ろから抱き付いた。
好き。
凄く好き。
こんなにも暖かい人は他には居ない。
「俺は文也クンが好きだよ。」
言った。
ようやく言えた…。
嬉しくて、でも照れくさくて…ギュッと腕に力を入れる。
顔をより埋めると匂いが鼻を擽って頭がクラクラした。
文也クンってこんな匂いなんだ…なんて考えるだけで堪らなかった。
そんな事だけでもっともっと文也クンが好きになった。
「た、大聖…だってお前は…!」
「君が好きだよ。」
「……。」
耳も首も真っ赤にして俯く文也クン。
俺より大きいのに凄く可愛いくて、また彼を好きになった。
何でも一生懸命に考えてくれる彼に甘えたくなる。
好きだ。
文也クンが好き。
「俺を好きになってくれてありがと…。」
「っ…!」
「大切にしてよ?俺だって今、頑張ってるんだから…」
「する!大切にする…!俺も大聖が好きだ!と言うか…俺の想い人は大聖だった。他の人なんて有り得ない!」
俺は吹き出して笑った。
つくづく思う。
文也クンは照れ屋で可愛くて一生懸命で…
俺にとっても大切な想い人。
←
無料HPエムペ!