03

「お前格好いいよな!」


文也クンからの微妙な告白から数ヶ月後、学園に編入生の田代祥平クンがきた。

祥平クンは明るくて、俺なんかじゃ到底友達になれないような人だった。

それでも無邪気に話し掛けてくれる祥平クンに、もっと仲良くなりたいと思った。


「大聖…。」

「あ、祥平クン。この間話してた漫画持ってきたよー。」

「おー!サンキューな!」


俺はそんな友人である祥平クンを利用した。

まだ文也クンの告白に返事がしたくなくて、なるべく祥平クンと一緒に過ごした。

きっと嫉妬して欲しいって邪な気持ちもあったと思う。

ハッキリ答えない癖に嫉妬はして欲しいなんて…俺は本当に女々しい。

そんな日々が続いて、気が付けば返事をするキッカケを失ってしまっていた。


「文也も食えよ!美味いぞコレ!」

「そうか…、それなら俺の分は大聖にやるよ。今は甘いものの気分じゃないからな。」


だけど文也クンは相変わらず優しかった。

照れながらも俺だけに特別をくれる。

そんな文也クンが好きで、だけどこんな気持ちは初めてで怖かった。

変わる事が怖かった。






「大聖っ…!お前セフレが居るのか!?めちゃくちゃ意外すぎる!」


生徒会室に来て早々に祥平クンはそう言った。

突然のこと過ぎて返す言葉が出ない。


「祥平…誰に聞いた?」


皆が驚いている中、鳴海会長が代表して聞いてくれる。


「親衛隊の奴が言ってたぞ。青柳様はセフレが沢山いらっしゃるんだから君は沢山居るうちの1人でしかない、だから自惚れないで!だってさ。」

「っ……、」


親衛隊なんて名ばかりだ。

だって俺を一番苦しめているのは親衛隊の存在だった。

俺の噂話をないことばかり流しては言い寄ってくる最低な連中。

そのくせ俺はこれ以上酷い噂を流されるのが怖くて何も言えなかった。

いつも相手の顔色を伺って機嫌をとって…。

特に隊長の姫路君が一番怖い。

彼は嫌な噂ばかり吹き込んでくる問題児。

だから彼の気に触れないようにいつも警戒して過ごしていた。


「祥平、その親衛隊ってどんな人か特徴分かる?」

「えー…んー…ちっこくて弱そうでへにゃってた?」

「心当たりが多すぎる…。」


椿クンは溜め息を吐いた。

生徒会の皆は俺の噂が嘘だと知ってくれている。

だから今回も心配してくれていて…こんなに暖かい仲間に恵まれている事だけが一番の救いだった。


「あ!思い出した!モリとか呼ばれてたわソイツ!」

「森クン…?」

「仲間のちっこいのがモリ副隊長とか言ってた!」


まさか…と思う。

生徒会の他の三人はピンとこなかったみたいだけど、俺の親衛隊には姫路クンの下に副隊長の森クンという後輩が居る。

姫路クンの紹介では天然で可愛い後輩だって言ってたのに…。

俺から見てもいかにも純粋そうで、姫路クンよりは信用出来そうだって正直思っていた。

なのに陰ではそんな事をしていたなんて…益々親衛隊が怖くなった。

俺は人間不信になりそうなくらい気が病んで仕事も手につかなくなった。


「大聖…大丈夫か。」

「……。」

「祥平、詳しい話はこいつらから聞いてくれ。大聖はもう今日は仕事をしない方が良い。送っていくぞ。」


文也クンが立ち上がって俺の腕を取った。

不意に鳴海会長を見ると、心配そうに分かった説明しとくって顔をしてて、椿クンは文也クンをニヤケながら見ていた。

椿クン…ニヤケないで、お願いだから。


「椿クン…、」

「分かってるよ。ちゃんと祥平に説明しとくから。」

「……。」


違うから!ニヤケないで!と強く言えない俺だった。

心配する祥平クンを2人に任せて生徒会室を出る。

腕を引っ張ってくれる文也クンに身体を任せていると、あっという間に部屋の前についた。


「着いたな…。」

「うん…。」


腕を離してくれない。

顔が見えないからどんな表情をしているのかも分からなくて、俺は急に不安になってきた。





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