02
「別に問題はないけどな…」
「ちょっと隣で寝てたんだ…ふぁ、」
「そうか…なら良いんだ、うん。」
声がどんどん小さくなる城本クン。
そして笑いをかみ殺して寝てたなんて明らかな嘘を吐く椿クン。
俺はどっちも見てられなくて俯いた。
「椿クンは寝てたんだよね?」
「もちろん。」
嘘つけ!って言いたかったけど言えなかった。
城本クンは下を向いていて嘘に気がついていないようだし…。
それにしてもニヤケすぎ。
椿クンは意地が悪い。
「眠いならもう少し寝てたらどうだ?」
「っ…そ、そうします…、」
城本クンの発言に椿クンが吹き出すのを堪えて、生徒会室から出て行った。
あれ絶対に大笑いしてるよ。
だって城本クン分かりやすいもん。
二人きりになりたいのがバレバレだ。
「泉川が昼寝なんて珍しいよな…。」
「もう夕方だけど。」
「……。」
ベタに咳をしながら起き上がったと思えばこれだ。
城本クンはそわそわと落ち着きがなくなって、俺にまで緊張が伝わってきた。
「そう言えば青柳って泉川のこと名前で呼ぶよな。」
「まぁ…お兄さんも居るしややこしいから。」
「良いよな…名前で呼ばれるって…。」
分かりやすい!
なに、城本クン名前で呼んで欲しいの?
ねぇそうだよね?
「椿君…な。良いよな…」
「じゃあ城本クンも名前で呼んだら…?」
椿クンじゃないけど笑いそうになってきた。
わざとじゃないの?ってくらい分かりやすい。
「大聖。」
「え…?」
「って、良い名前だよな、…うん、呼ばないのは勿体無いくらい良い名前…だよな。」
城本クンは手で口元を覆いながらそう言った。
右に左に椅子の回転を利用して動いて落ち着きがない。
「ありがとう。」
「おー…。」
「……。」
なんだか俺は城本クンが凄く可愛いく思えてきた。
意地悪して、甘やかしたくなるような可愛いさだった。
「大聖。」
「何?」
「って良い名前だな。」
「それさっき聞いたよ〜。」
可笑しくて思わず笑うと俯いてハニカんでいた。
やっぱり可愛いな。
こっちまで照れてくる。
「文也クンも良い名前だよね?」
「っ…?!」
「文也クン。」
名前を呼んでみたら、顔を真っ赤にして俺と目があった。
可愛い…!
可愛すぎる!
城本クンの照れる顔にドキドキして癖になりそうだった。
だって俺のことが大好きだって身体全体で伝わってくるんだ。
もっと見たかった。
俺を好きだって証が…城本クンの気持ちを言葉以上に知りたかった。
「俺、これからは文也クンって呼ぼうかな?」
「じゃ、じゃあ俺も大聖…って呼んでやるよ。良い名前だしな。」
「ふふ…ありがと〜。」
若干上から目線の発言だったけど、余裕がないのが伝わってきて余計に嬉しかった。
俺という存在が城本クン…文也クンをこうさせてるんだ。
今思えばこの日、俺は文也クンを好きになった。
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