07

天野の最もな意見を素直に聞き入れて、僕は青柳様に時間を作ってもらった。

場所は生徒会室の隣にある応接室を指定された。


「大丈夫ですよ。」

「っ……余計なお世話。」


話し合いには天野が着いてきてくれた。

僕一人では真実を聞く勇気がなくて、適当な理由をつけて無理矢理ついてきてもらった。

本当は別の誰かが良かったけれど、もし嫌な真実だったなら聞かれたくない。

だから仕方がなくあの場所に居た人の中で選んだ。

ただ、まともに話した事のある人が天野しか居なかったので選びようがなかったけれど。


「失礼します。」


生徒会室に入ると生徒会メンバーが全員揃っていた。

そんな当たり前の事に緊張して、心臓が嫌なくらいドキドキした。


「こんにちは。じゃあ隣に…。」


青柳様の誘導に着いていく。

生徒会メンバーの視線が辛くて俯いて歩いた。


「天野。何故居る。」

「姫路君のお供ですよ。」

「お前も来るとは聞いてない。」

「では今言いました。会長、失礼します。お仕事頑張って下さい。」


後ろでそんな会話が繰り広げられていたけど、頭に入ってこない。

余裕なんて全くなかった。




僕と天野は応接室の綺麗なソファに並んで座り、目の前には青柳様が一人で座った。


「あの……、」

「……。」


何から話せば良いのか分からず頭が真っ白になる。

天野はあくまでも見届けてくれるだけで、僕が積極的に話さなきゃならない。

そのプレッシャーに潰されそうだった。


「大聖、俺が居なくて大丈夫か?」


声のする方を見れば、城本様が扉付近に立って心配そうに僕らを見ていた。

その雰囲気から青柳様を大切に思っているのだと伝わってきて、ようやく彼の想い人の真相に実感が湧いた。

僕は今まで何を見てきたんだろう…。

こんなにも分かりやすいのに。


「うん…大丈夫。」

「そうか、何かあったら言うんだぞ。」

「ありがとう。」


城本様は優しく微笑んで退室した。

その時、嬉しそうに笑う青柳様の表情がいつの日か天野にハニカんでいたものと重なる。

天野は恋バナなんてしちゃう人らしいし、あの時も案外城本様の話をしてたのかもしれない…と思えば、自分の行動を改めて情けなく思った。


「お時間を作って頂きまして…ありがとうございます。」

「うん…。」


悪口は次から次へと出てくる癖に、こういう話し合いの場は昔から苦手だった。

緊張して手汗が酷い。

それでも勇気を出して口を開いた。


「この間の事…聞いても良いですか…?僕に対しての気持ちとか…」

「……ごめんね、余り気にしないで。」


青柳様は困ったように微笑んでくれた。

けど、納得出来ない。

だって僕が欲しいのはそんな曖昧な言葉じゃないんだ。

確実にこうだと言う言葉が欲しい。


「ではあの時に言っていたことは嘘なんですか?」

「……。」

「本当、なんですか…?」


嘘だと言ってよ…そう願っているのに青柳様は頷いてくれなかった。

俯いて黙り込む。

嘘、嘘…こんなの嘘だよっ…。


「俺は姫路クンが求めてるような人間じゃない…。弱くて、自分の意見も言えない弱虫で、だからずっと姫路クンが怖かった。」

「っ…僕が…こわい?」


青柳様はいつもの困ったような微笑みを消してそう言った。

怖い?

こんなに可愛い僕が怖い?

むしろ僕の方がそれを言いたいよ。

本当は嫌われてるかもしれないなんて…想像するだけでも恐ろしい。


「ごめんね…、姫路クンみたいな自信家なタイプの知り合い、今まで居なかったんだ。俺とは正反対だし、この金髪だって、緩いキャラだって…作ってただけなんだよ。ちょっとでも明るくなりたくて…。」


青柳様は綺麗な金髪をぐしゃっと手で握って辛そうな顔をした。

こんな表情を始めて見て、まるで別人みたいだと思った。


「どうすれば良いかずっと分からなかった。姫路クンが求めてる俺と実際の俺は違う。元々は勘違いさせた俺が悪いんだけど…その、俺の事で変な噂は流さないでくれるかな…?」

「っ…、」


辛そうに言われて僕は気がついた。

疑われてる。

自分の噂を流した犯人が僕だって青柳様は思ってるんだ…。




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