04
『お話しませんか?』
その誘いは翌日にきた。
俺は急いで天野の部屋へ向かう。
歩きながら何を話そうか…なんて考えてみて。
でも結局、何も思いつかなかった。
興味のあるものなんて最近じゃ天野ぐらいしかない。
「どうぞ、いらっしゃいませ。」
部屋のドアを叩くとすぐに天野が出てきた。
制服のまま笑って迎えてくれる。
天野はせっせとお茶を出して俺達は向かい合わせで座った。
何を話そうか決まってない。
凄く困った。
「実は相談があるんです。」
「相談…?珍しい…。」
「ふふ、なんせ珍しいコンビですからね。」
「…だな。」
つられて笑う。
こう言うのは悪くない。
「書記の城本君、好きな人が居るでしょう?」
「あぁ…一応聞いてる。相手は知らないけど…。」
「それが僕、相手が誰か分かっちゃったんですよねー。」
まさか恋愛トークとは思わなかった。
しかし…城本の片思い相手を見つけるなんて興味深い。
アイツとは付き合いが長いから、正直ちょっとだけ気になっていた。
「誰。」
「でしょうねー?」
「…もったいぶるなよ。」
「もったいぶらないと面白くないでしょう。それにしても…篠山君が誰かの話に興味を持つなんて意外ですよね。」
「まぁ…珍しいコンビだからな。」
割と気に入った響きの言葉を使えば、可笑しそうに笑われる。
「それで城本君の恋愛がですねー、もうめちゃくちゃ甘酸っぱいんですよー。」
「へぇ、実は城本と仲が良いんだ。」
「いーえ。でも見ていれば分かります。彼にだけ優しいですから。」
「…分からない。」
そんなに注意して見ていなかったから分からなかった。
想像がつかず、ピンともこない。
「まぁすぐに分かりますよ。なんなら今から城本君を呼びます?」
悪戯っ子のように言う天野は新鮮だった。
何よりその発想に驚く。
なんて突飛で、なんて…なんて、
「面白い。」
「でしょう?」
「電話するわ。」
「話が早いですねー。そうくると思いました。」
楽しくなってきてお互いにニヤニヤする。
幸い城本はすぐに電話をとってくれて、理由も聞かずに来てくれる事となった。
よく分からない展開だけど…だからこそ面白い。
こんなにも楽しくて、こんなにも笑うのは久々だった。
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