09

後日、話し合いの場を設けた。

椿は嫌がったけど何とか説得した。


「……。」


空気が重い。

椿も柚希も俯いて、話し出そうともしない。


「あー…駄目だ。俺こうゆー重い空気堪えられない…。」


あまりの息苦しさに頭を抱えて嫌な顔をする。

それでも二人はなんのリアクションも起こさなかった。

あー面倒だ。

さっさとお得意の解釈を話そう。


「二人とも黙って聞いててくれ。俺なりの視点で見える事を話す。」

「…何それ。」

「夢野頼む。」


余計な事を言ってまた関係が拗れるのが嫌らしい、俺様な柚希にしてはやけに素直だった。

その素直さで椿に告れ。


「まず柚希、お前は椿を愛しすぎている。」

「っ……!」


二人が息を飲むのが分かる。

椿は訳の分からない顔、柚希は何言ってんだお前って顔。

まぁまぁ聞けよ。


「柚希は心配性が過ぎるんだ。だから椿を束縛してしまう。そうだろ?」

「……。」


柚希は頷いた。

声は一切出さないと事前の話し合いで決めていた。


「何それ。意味不明。」

「まぁ聞けよ。そして考えろ。」

「……。」

「度が過ぎる束縛をしてしまったのは、椿に新しい友達が出来たのが寂しかったんだろ。違うか?」


柚希は黙って頷く。

それはもう、見たことがないくらい目に見えて落ち込んでいた。

流石にこの変化、椿だって気付いてるよな…?


「そして椿。俺たちは勘違いしてたんだよ。柚希が椿を馬鹿にした事はない。全部すれ違いだよ。」

「…どうだか。」

「そもそもお前らには会話が足りない。兄弟の癖にお互いに肝心な本音を話さないんだから。その上2人ともマイナス思考だし思い込み激しいし…。」


椿は柚希に遠慮をしてる。

そして柚希も弟に恋をしてるという罪悪感で戸惑っていた。

だからどちらかが踏み込めば、どうにか修正出来るかもしれない。


「話すことなんてなんにもない…。」

「でも椿、お前はいつも柚希を気にしてるし、柚希かっていつも椿を気にしてる。一番に考えてるんだよ。」

「意味不明。別に考えてないけど。」

「いーや、考えてるだろ?柚希に負けたくないとか。柚希より幸せになりたいとか。お前の中心にはいつも柚希が居る。」


椿が黙った。

図星なんだろう。

例えそれが良い理由ではなく、コンプレックスからくるものだとしても…

お互いの中心にお互いが居ることに変わりはなかった。


「俺の中心には椿がいる。」

「っ…、」


今まで黙っていた柚希が話し出した。

タイミングが良い。

珍しく空気を読むな…と思ったが、今までは状況を知らなかった所為で身勝手に振る舞えただけで、本当は空気の読める奴なのかもしれない。


「俺は椿が好きだ。だからどこへ行くのにも着いて行きたかった。ずっと一緒に居たかったから…。」

「……。」

「あの日も、俺が知らない所で椿が誰かと遊んでいた事に嫉妬したんだ。椿の一番が俺じゃなきゃ嫌だった。」

「…、」

「勉強だって習い事だって、全部椿に格好いい所を見せたくていつも張り切ってた…。でも、椿にとってはそれが負担だったんだよな。ごめん。」


それは俺も知らない事実だった。

柚希は昔から何でも器用にこなすイメージが強い。

でも今なら改めて分かる。

本当に柚希は椿が大好きなんだって。




あきゅろす。
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