08
先にクラスに着いていた天野を見れば、スヤスヤと寝ていた。
端の方には姫路、松坂と真木のコンビも居る。
各親衛隊の幹部クラスも容姿で決まっているようなものなので、ある程度顔見知りが揃っていた。
「松坂の髪型格好いいよな。最初はビックリしたけどちょー似合ってんの。」
「本人に言ってやれ。」
「いやいや、言いに行くほど話した事ないし!」
「だから面白いんだろ。」
ニヤニヤして言えば、高田から抗議の声が上がった。
想像しただけで面白い。
「お。今日は皆さんお揃いだな。生徒会と風紀ってやっぱり華がある〜。」
「お前は頭に花咲いてるけどな。」
「うるせぇよ!」
ケタケタ笑ってやった。
ちなみに役員の仕事は部活と同じで放課後に行うこととなっている。
ただイベント前は準備で忙しいので、授業に出ない事もあるが。
生徒会や風紀の連中が席に座るのを何となく見ていれば柚希と目があった。
席には着かずにそのままこちらへ来る。
ちょっと驚いて緊張した。
「夢野…昨日は悪かった。」
「いや、大丈夫。調子はどう?」
「…微妙。」
あのあと一人で考えたいということで柚希の部屋を去った。
そう言えば…教室で柚希と話すのは何年ぶりだろう。
皆かなり驚いていて、高田なんて詳しく話せオーラを出してくる。
約一年半の付き合いで以心伝心出来るから、楽だけどちょっとウザい。
そんなことより…。
椿がコッチを睨んでいた。
うわ…また勘違いしてないか…?
俺はいい加減に面倒なことは嫌いだぞ。
「柚希やばい、また勘違いして椿が睨んでる。放課後に話そう。」
「……最悪だ。」
「ドンマイ。」
苦笑いしか返せない。
誤解を解かない限り、きっと椿は被害妄想を膨らましていくのだろう。
椿の為にも誤解を解かないと。
「なに、今の…なに、」
「なんで小声なんだよ。」
「だってあの泉川兄がいきなり夢野に…え、昨日ってなに。」
苦笑いして高田の頭を叩く。
お前まで変な勘違いはやめろよ。
「高田は高等入学だから知らなかったよな。俺は泉川兄弟と幼馴染みなんだよ。しかも幼稚園から。」
「…まじで!今までそんな感じじゃなかったじゃん。」
「ずっと喧嘩してたけど昨日和解した。以上、説明終わり。」
「え〜、詳しく〜。」
高田がしつこいくらいに詳細を聞いてくる。
それを阻止しながら天野が起き上がるのを視界に入れた。
時計を見れば15分ほど寝ていたらしい。
寝癖のついた髪の毛を整え、水を飲んだ。
朝の天野はいつもこうだった。
完璧な天野だが、休み時間はいつも寝ていて、これだけが抜けている点として皆が知っている情報だった。
「って何。天野見てんの?」
「あいつ朝は抜けてるよなぁ…。」
「確かに…寝起きでも美形〜。」
こんな天野を見るのは俺の日課だった。
普段とのギャップがあって可愛いと思う。
しばらく高田と二人で天野の様子を観察した。
天野彼方は凄い。
ちょっと動けば皆見るし、自然と視線が集まる綺麗な人。
きっと皆が憧れていて、天野を嫌いな人でさえ天野を無視出来ない。
だから天野が動けば姫路や松坂、真木も無意識に天野を見ていた。
なのに肝心の天野は誰も見ていなくて、視線を気にする様子もない。
この不思議なバランスが俺は密かに好きだった。
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