07

「あ、天野彼方だ。」


友人、高田の視線の先に天野が居た。

わざわざフルネームで呼ばれるくらいの有名人。


「天野おはよう。早いな。」

「夢野君、高田君…おはようございます…。」


天野がフワリと笑えば高田のテンションが上がる。

声は出てないけど空気で伝わってきた。

それにしても…天野の顔色が少し悪い。


「体調不良?」

「いえ…ちょっと寝不足でして。」

「何時に寝たんだよ。」

「4時ぐらい、ですかね…?でも今日は3時間寝れたので…寝れた方です。」

「マジかよ…。」

「はい…ではまた。」


にこやかに去っていく天野。

眠たそうではあったけど、足取りはシッカリとしていて安心した。

それにしても4時まで何してたんだか。


「やっぱりあの噂って本当なんだな。」

「噂って?」

「天野にはセフレが居て毎日ヤってるらしい。だからいつも寝不足って話。」


高田の話に驚く。

松坂や真木、姫路辺りが喜びそうな話だ。


「どっからの噂?」

「親衛隊の連中。最近の中でも一番ビッグなニュースだな。」

「なるほど。それなら違うだろうな。天野はそんな奴じゃない。」

「…分からないぞ?」

「俺の感。きっとアンチ天野派が流したデマだ。思い当たる所もある。」


以前、姫路がそんな話をしていた。

天野が青柳を誘惑していたとかなんとか。

あれかって姫路の行き過ぎた被害妄想だった訳だし、セフレだなんて尚更考え難い。


「なんだ。つまんねーの。」

「遊び人であって欲しかったのか?」

「いーや。ただ天野って謎だらけだし、ちょっとでも生態知れたら面白いじゃん。」

「あのなぁ…。」


でも正直、高田の気持ちも分かる気がする。

何故か誰も彼の事をよく知らないのだ。

それは天野が自分の事を話さないのもそうだし、そもそも深い友達を作らないのが原因だった。

二年間ずっと同じクラスなのに何も知らない。




「おはよ。」

「はよー。」


挨拶もほどほどに席に着く。

このクラスは皆、親衛隊が作られるほどの容姿を持つ者と役員だけで構成されていた。

つまり生徒会や風紀委員なども同じクラス。

ちなみに他のクラスは特別進学コースやスポーツコース、総合コースなどのジャンル分けがされている。


「天野いつも寝てるよな。」

「まぁ三時間じゃあな…。」




あきゅろす。
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