08


どうやらまとまったらしく、天野や真木君達は顔を上げた。

それなら僕も…と顔を上げようとすれば、頭を押さえる手に力を入れられた。

イタッと松坂君の声。

どうやら僕と松坂君だけが、未だに土下座をさせられているようだった。

なんで…?


「松坂君、姫路君。君らは僕がいちいち言わないと分からないんですか?」

「天野…田代は僕達を許したじゃないか!離せ!」

「それは松坂君の思い込みですよ。だからこんな事態が起こったんです。君は普段から思い込みが激しい傾向がありますからね。」

「なにそれ!?天野ふざけんな!」

「ふざけているのは君達でしょう。」


天野と松坂君の言い合いがヒートアップする。

僕は相変わらずだんまりで、呆然と2人のやりとりを聞いていた。


「いい加減に離せ!」

「今の状況を批判する前に自分がすべき事をまず考えて行動で示して下さい。考える頭ぐらいあるでしょう。」

「何言ってんの!」

「さぁ、よく考えて。小学生でも出来る簡単な事ですよ。」


小学生でも出来ること…僕は考えた。

何故、未だ頭を押さえつけられているのか…。

そう言えば僕…まだ謝ってない。

松坂君も謝ってない…。


「田代君、ごめんなさい…許して下さい…。」

「っ……、」

「田代君。姫路君を許して頂けますか?」

「ま、まぁ…。もうこんな事すんなよ。」


天野がもう一度謝って、僕の拘束が解けた。

身体を起こす。

その時、見守っているのが風紀や生徒会という、僕が尊敬する方々ばかりだという現実を思い出した。

僕は自分の行動が恥ずかしくなって顔を上げれなかった。


「…まだ意地を張りますか?」


あれから30秒程の沈黙が続いた。

こんな時の30秒は凄く長い。

俯いたまま横を見れば、松坂君の頭を押さえる天野越しに、僕と同じく俯いた面々が目に入った。

皆後悔してる…僕の所為で。


「僕は謝らない…僕は悪くない…。」

「松坂君。」

「今回の事だって本当は姫路が悪いし。」

「っ……、」


最悪最悪最悪!こんな事になるなら、こんな馬鹿みたいな作戦考えるんじゃなかった!本当に最悪!


「姫路君は関係ありません。連帯責任です。誰かに責任を押し付けた所で君を救うものは何もありませんよ。」

「でも!」

「でもじゃないでしょう。」


松坂君がいつ本当の事を話すかとハラハラした。

バラされるのだけは嫌だ、絶対に嫌だ!


「田代君、松坂君は少し意地っ張りですが本当は素直で良い子なんです。」

「どこがだ…いい加減にしてくれないか。茶番に付き合ってる暇はねぇよ。」


野々村委員長が呆れたように言う。

早く謝ってよ…終わりにしたい。もうヤだ…。


「五分ほどお時間下さい。」

「…五分な。」


委員長が溜め息混じりに頷くと、天野は立ち上がって風紀室を出て行った。

廊下を走っていく音に皆ポカンとして少しざわつく。

そして長い長い五分が経って、また天野が帰ってきた。





あきゅろす。
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