06
「野々村!彼方は絶対にこんなことしないって!」
「そうですよ!彼に限ってこんな…!」
委員長の行動に焦ったのは刈屋君と神谷君。
風紀に二人も天野派が居るのは計算外で、凄く不安を煽られた。
「5分ほどで来るらしい。」
「野々村!」
「刈屋黙れ。話を聞かない限り分からんだろ。それより姫路、お前だけ隊が違うようだが。」
ドキッと肩が揺れた。怖い…。
そうだ、僕だけ隊が違う。
「僕は松坂君達と仲が良いですし…」
「そんな理由でか。」
「…成り行きです。」
細かく話せば墓穴を掘りかねないと、適当に誤魔化す。
「成り行き、な。詳しく話せ。」
「…出来心です。」
「頭の作りが悪いんだな。よくやる。」
「っ…、」
その時、廊下から走る音が聞こえてきて風紀室がシーンとなった。
「失礼します。」
天野彼方が入ってくる。
振り向いて驚いた。
上下ヒョウ柄の入ったスウェットで、髪の毛は少しボサボサ。
オマケに眼鏡までかけている。
寝起き感満載の天野は凄くレアだった。
いつも完璧な天野とのギャップが凄まじい。
こんな姿は初めてで、言葉に出来ない気持ちがせり上がってくる。
皆も無意識に魅了されているのを感じた。
「うちの隊……姫路まで、何かやらかしましたか?」
僕達の顔を確認しながら掠れた声で言った。
あまりにもそれが色っぽい声で、違う意味でドキッとする。
僕はまた天野彼方が嫌いになった。
「祥平が襲われた。今は隣で話を聞いてる。」
「…制裁ですか?」
「そうだな。お前が指示したとコイツらは主張しているが。」
委員長の睨みが今まで以上に鋭くなる。
空気がピーンと張り詰めた。
「いえ、僕は制裁を規制しました。彼らの勘違いでしょう。」
「…と、言ってるが?」
今度は僕らが睨まれる。
「天野隊長に指示された通りです。」
「そうです。」
天野彼方に見とれていたらしい、ハッとした松坂君と真木君が言う。
すると制裁をした残りの5人も同調して天野を責め立てた。
ここで自分達が嘘を吐いているなんて言えない。
だから皆必死に主張して、あっという間に天野彼方の立場が悪くなった。
「天野…何故祥平をこんな目に…。」
「困りましたね…会長まで…。」
鳴海様が無表情で天野に問いかけた。
しかし天野は頭をかいて、ハァ…と溜め息を零す。
その荒っぽい仕草も新鮮で、一瞬だけ空気が止まる。
そして僕はまた彼を嫌いになった。
「そうですね。僕の責任です。」
「彼方!」
「…刈屋さん、僕の性格知ってますよね?」
「分かってる…でもな、」
刈屋君の知ってる天野の性格って何だろう。
疑問に感じたけど質問出来る空気じゃなかった。
「僕の責任です。」
「つまり、主犯であると認める訳だな。」
風紀室がざわつく。
皆戸惑っていた。
「僕は主犯ではありません。が、これは僕の連絡ミスが原因だと考えています。田代君には本当に申し訳ないです。ですが、ここは話し合いで穏便に済ませて頂けないでしょうか。」
「祥平がどんな目にあったと思ってる?軽い罰では済ませれねぇからな。」
「そうですね…。まず田代君に謝らせて下さい。」
委員長は暫く考えて、田代をこっちの部屋に呼んだ。
田代は天野を見た瞬間、怒って口を開いた。
「彼方!なんでこんな事したんだよ…信じてたのに!」
「僕ではありません。連絡ミスが原因でした。」
「そんな事言って誤魔化すなよ!俺がお前に何したって言うんだ!俺が一体…!」
今にも泣きそうな震える声で叫ぶ田代を刈屋君と神谷君が抑える。
きっと天野を守りたいに違いない。
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