04
「あらどうしましょ。遂に直キングの下部に米江さんが吸収されましたよ。」
「あらそう。」
「気に…?」
「ならない。」
織戸と関わるようになって一週間経った頃には、もうあしらうのも面倒で適当に連んでいた。
自然と錯覚というものが起こるもので、案外良い関係なのでは…と思う時もある。
が、相手は人間大好き織戸なのだ。
決して油断してはならない。
「直たんの気持ちが僕ちんに向かないのなら、僕ちん直キングの所に行くんだからね!」
「は?」
「米江の真似。彼の気持ちを代弁してみた。」
「うん、お前が米江と話した事がないのは分かった。全然似てない。」
俺は織戸に冷たい視線を送った。
人をネタにして…要は貪欲なのだ。
人の不幸は密の味、一番しっくりくる言葉はこんな所だろうか。
「直キングテモテモー。流石は僕らの直キング。」
「え?て言うかさっきから誰。」
「あっち見れば分かるよ。」
「…見たくない。」
「うーん、我が儘だなぁ…。」
溜め息を吐く織戸を更に冷たい目で見た。
嫌な予感しかしなかった。
「深梅直輝だよ。」
「誰それ。」
「…ナニソレ。まさか知らないの?めちゃくちゃ興味深いんだけど。」
普通から逸れたことに目敏い織戸だ。
深梅直輝なる人物はよほど有名人らしい。
噂に疎い俺が彼を知らなかっただけで、織戸は目をキラキラと輝かせてこちらを見てきた。
正直かなりウザい絡み方だ。
「嘘、知ってる。クラスメートだよな?」
「なーんだ。流石に知ってるかぁ…。知らない方が可笑しいもんな。」
適当に言ったら当たっていたらしい。
深梅直輝なる人物は案外近くに居た。
「何で直キングなわけ?」
「んー…イケメン無双してるから?もう天下統一も夢じゃないね。」
「へぇ。それは随分影の薄いキングだな。」
「うわ、随分酷い言いよう。直キング信者達に聞かれたら殺されるよ?」
「一体何の宗教だよ…。この学校大丈夫か?」
「ふふふ、それが彼らの面白い所なんだよね。直キング大好きな集団、ほらあれ。」
無視したい所ではあったが、俺にも多少の好奇心と云うものが存在する訳で…魔が差して彼らを見てしまった。
そして後悔する。
織戸が指差す集団の中で俺を睨む二つの目があった。
やはりこれはどの状況においても変わらないらしい。
「熱烈ぅ。」
「そうだな。」
「その心境は?」
「オリトさんも含めてメンドクサイ。」
何だか色々と嫌になって片言で呟いた。
織戸は嬉しそうな顔でヤッターなんて言うから、実はMなんじゃないかと思う。
back
無料HPエムペ!