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強制終了そして再起動

ふざけたふりして本気なんだ

私が欲しい言葉は、





「ねえシズちゃん」

思い立ったが吉日。

…などといえば聞こえはいいのだが。


「シズちゃんって、甘いもん好きだよね?」
「別に嫌いじゃねえけど」
「なんかさ、そろそろお腹すいてこない?」
「お前の顔見たら食う気失せた」
「あは、俺の顔だけで満腹ってこと?嬉しいなぁ、シズちゃんがそんなに俺のこと待ちわびてわざわざ昼抜いてきてくれたなんて」
「…あー死んでくんねえかな」


とある日の昼下がり。
今日の仕事は午後からか、と予定の書かれたカレンダーでスケジュールを確認し、それまで何をしていようととりあえずベッドに寝転がった。矢先、
ぴんぽーん、と間抜けなチャイムが部屋に響いた。

玄関につくまでに何度も押されるチャイムに苛立ちながらも、はいはいうるせえなと金属製のノブを回して引く。

まあ、案の定、そこにいたのは彼の大嫌いなくろづくめの男で。


「…何しにきたんだよ」
「いや、何しにって…まあ率直に言うと、」

臨也はそういって、軽やかな調子で静雄の座るベッドの脇へ腰かける。

「俺、甘いよ?」

は?と思わず首を傾げた。
臨也は持ち前の輝かしい笑顔(本物なのか偽物なのかわからない)を静雄に向け続ける。

「……食えってか」
「ご名答。さすがシズちゃん、物分かりがいいねえ」
「嫌だ」
「いや、即答かよ」

まずそうだし、と真顔で呟く静雄を脇に、そんなのは聞こえないフリ。臨也はぼすんと勢いよく体を後ろに倒した。

――そもそも"俺を食え"ってどういう意味だよ。
まあ臨也のことだから、今がちょうど昼時じゃなくてもそんなこと言い出してただろうが。


臨也が静雄の家を訪ねるときは大抵が欲求不満なときだ。
それを受け入れるかどうかは別として、しょうがなく部屋には入れてやる。

…そんなもん一人で済ませればいいのにな。


「俺、絶対食ったら甘いって」
「…そのしょうもない自信はどっから湧いてくんだよ」

「だってさ、ピッチピチの21歳児だよ?甘美、って感じ?甘党のシズちゃんにはとっておきでしょ。なんだったら蜂蜜でも練乳でもぶっかけていいよ?まあ雰囲気出すなら練乳のほうをオススメするかな」

21歳児ってなんだ。

ぺちゃくちゃと喋りだす自称ピッチピチは、自分を腹の足しにしろと聞いてやまない。
まあ、実際の意味は違ってくるのだろうが。


静雄はぎゃーぎゃー五月蝿い臨也を尻目に、ベッドの脇に置いてある小さなデジタル時計に目をやる。

(もう時間か、)

図々しい来客者に構っている間に、時刻はとっくに午後2時をまわっていた。

静雄は、ゆるめていた(別に何かしようとしていたわけじゃない。)ベルトをしっかり締めると、ベッドを軋ませながら立ち上がり、くるりと臨也のほうを振り返る。

「…お前、俺が今から仕事なの知ってんだろ」
「まあ、そりゃあね」

――常にスケジュールまで把握されてちゃやってらんねえな。

「…もう行くからな」
「えー、昼飯抜きでー?」

「……普通はよ、甘いもんはデザートだろ?」


え、と思わず声を漏らした臨也を、静雄は見逃さなかった。

ポケットに財布と携帯を適当につっこんで、目下にある頭にぽんぽんと手を置く。
耳元で、仕事終わってからな、と囁けば、臨也は顔を隠すように俯きこくりと頷いた。



そんなに甘いんなら食ってやるよ。

間違って食いちぎったらごめんな。






強制終了そして再起動










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