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これは何のフラグ?





「雨かぁ」



朝からザーザーと降り続く雨。全く止む気配はない。ブウサキの散歩に行けなくて結構つまんない。というか暇?



「ジェイドーひまーつまんなーい〜」
「……人の名前で歌うのはやめてください」



普通に言うのもなんだからと適当にメロディをつけたら怒られちゃった。というか溜息吐かれた。



「私は仕事中です。暇ならどこかに行けばいいでしょう?」
「雨ん中ぁ?めんどーい」



書類に目を通しながら時折、印を押すジェイド。今日は雨のせいでブウサキの散歩は出来ない。先日、ピオニーに襲われそう?になって以来、一人でピオニーの私室へ行くのは禁止された。ブウサキを散歩させに行くときは別として。他にこれと言って仕事がなくて暇だ。妄想しようかなぁとすると何も口に出してないのにジェイドに止められる。なんでわかるんだろう。



「数冊でしたら普通の本もありますから読みますか?」



字を読む勉強にもなりますから、と。なんとか読み書きできるレベルだからどうしようかと悩む。けどわからなければ教えてくれるっていうから読むかなあ。



「手取り足取り教えてもらわなきゃ。うへへへっ」
「その気味の悪い笑い方はやめなさい」



家庭教師と生徒的な妄想を瞬時に繰り出せばすかさず突っ込まれた。二人きりでお勉強ったらそれしかなくない?



「あなたはどうしてそういう発想しかできないのですか?」
「オタクだから」



眉を顰めるジェイドに即答するあたし。この世界にはオタクという文化がないから理解できないみたいでどう説明したらいいのか困る。説明したところで理解できなきゃ意味ないし。二次元だろうが三次元だろうが同姓カップルの妄想が一番理解できないみたいで。まあ実際のカップルは少なからずいるみたいだろうけど。



「あたしは好きなものを好きなように愛でるのが好き!」
「それが妄想ですか。私には理解できませんね」



まあ、ジェイドに理解されたらなんか怖いけど。テレビやゲーム画面越しで見てたキャラが目の前で動いてること自体があたしにとっては奇跡なんだけど。ああ、しかし、イケメンだ。目の保養だ。 妄想するなって方が無理だよね、こんなん。


「なんですか?人の顔をジッと見て」
「いやぁ、カッコイいなぁって」



性格がちょっと問題なだけでジェイドって物件としてはかなりいいんだよね。顔良し、声良し、背も高くて地位もあって家柄もあって当然仕事も出来るし。それに関してはピオニーやガイもなんだけど……女運はないよね?たぶん。



「今、失礼なことを考えましたね」
「いひゃい!いひゃい!」



そして読心術の使い手だった。ほっぺ抓られて痛い。いつの間にあたしの側へとやってきたんだか。



「ヒカリ。痛いという割に顔が笑ってますよ」
「これも愛って事で!」



ドヤっ!と腰に手を当ててふんぞり返ってみる。大してない胸を強調させてるみたいだけどそこは気にしない。女は胸じゃぬぇ!



「ふむ」



何かを考え込むジェイド。後ろで腕を組み、ジッとあたしを見下ろす。背が高いから威圧感がハンパない。でもイケメンに見つめられると照れるな。



「へっ?ちょちょちょっ!!ジェイドぉぉ!?」



何がどうしてどうなった!?突然ジェイドに抱きしめられる。何の前触れもなく無言でだから焦る。彼の中で何が起こってその行為に至ったんだ?うひょぉぉ!どどど動悸があぁ!!



「あなた自身は男に免疫がなさすぎですね。人のことは散々妄想する割には」



そそそそそんなこと言ったって!いやいや、そもそも相手を選ぶって。クラスの男子とかだったら何の萌えもトキメキもないけど自分の好きキャラは別でしょ!?トリップしただけでも未だに夢見たいなのにギュッとされたら誰でもKOするって!



「は、離してー!」
「嫌です」



ぬぉぉぉーっ!きっぱりと即答されたぁ!これはどういうことなんだ?ジェイドはあたしで遊んでいるのか!?そうなのか!絶対遊ばれてる……よなこれ。



「よくわかんないけど、ごめんなさない。離して……」



これ以上はあたしの心臓が持たない。ドキドキどころかバックバック言ってるし。今なら死ねる。体中が熱くて仕方ない。ヒカリちゃん、人生最大のピンチ!って感じ。



「まあいいでしょう。ヒカリの面白い一面も見れましたし」
「こんの鬼畜眼鏡ぇ!憎めない自分がいやーっ!」



ガシガシと頭を掻くあたしを余所にジェイドは仕事を再開しましたとさ。




((これは何のフラグ?))



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