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そんな朝の事情です





「今日もいっちにちお仕事だ〜」



もう行き慣れた道を一人スキップで行く。歌いながらスキップなんぞしてるもんだから道行く人がなんだあの子?的な目で見ているが気にしない。大声でアニソンを歌ってないだけマシなはずだ、たぶん。まあ、オールドラントでアニソン歌ってもわかりはしないだろうけどね。



「今日はまずは……ブウサギの散歩だっけ?」



確かガイが一日貴族院の方に行かなきゃならないから散歩が出来ないって言ってたっけ。けどあたしじゃ全部同時に散歩は連れてけないから……三回に分けるか?一回に二匹か三匹が限度だし。



「ピオニー陛下、おっはようございまーす!」



適当なノックをしてピオニーの執務室へ入る。が、まだ部屋の主はいない。ありゃ?まだ起きてないのかな?と部屋を見渡す。この時間に行くって話はしてあったはず何だけど。



「陛下〜。朝ですよ〜」



続きになっている私室の扉を控えめにノックする。いくら元気満点なヒカリちゃんでも一応、皇帝陛下の部屋のドアを全力で叩いたりはしないよ……たぶん。



「うわっ、マジで寝てるし」



返事がないけどドアノブを回して扉を押す。すると鍵は掛かっていなくて中にすんなりと入れた。不用心だなぁ。



「うーん、起こしていいのかわからん。とりあえず、ブウサギの散歩に……行く前に」



こんな機会は滅多にない。ちょいと寝顔を拝見しよう。皇帝の寝顔なんて早々見れないよね……居眠りならともかく。ああ、ケータイを持ってくれば良かった。ぱしゃりと撮って待ち受けにするのに。ああ、ジェイドやガイのもあればそれでご飯三杯いけるくらいの妄想も出来るのになぁ。



「では、頂きます」



そっと顔の隠れたシーツをめくる。褐色の肌に金色の髪。くはぁっ!イケメンは寝ててもイケメンか!なんてことだ!!すでに鼻血でそうだ。うわ、ヤバっ!これだけでも十分妄想できるわ。



「ごちそうさまでした」
「俺はまだ食べてないぞ」



手を合わせてぺこりと頭を下げると不意に手を捕まれる。へっ?と声を上げると同時に引っ張られて、前へと倒れる。何が起こったのかわからず、衝撃で思わず瞑った目を開けると何故か褐色が目に入った。



「なかなか抱き心地がいいな」
「うひょぉぉ!?」



何かと思っていたものは……ピオニーの肌の色だった。それも、顔じゃない、体の。下は白いズボンを履いていたけど、上半身は裸で、そんなピオニーにあたしが抱きしめられている。しかもベッドの中で。おいおい、これは何のフラグだ?ここにいるべきはジェイドかガイじゃないのか?



「ななななななにしてくれさってるんで!」
「はははっ。何言ってるのかさっぱりだぞ」



だが、男の寝顔を覗き込もうとしたんだ襲われても仕方ないぞって、んなくらいで襲うのか!?男は狼じゃなくて野獣なのか!?はっ!これがピオジェやピオガイもしくはジェイガイだったらおいしくね?カプは逆でもいいけど……いやいやいや!んなことを考える場合じゃない。しかし、



「ふへへへへっ。どっちにしても涎出そう」
「……年頃の娘の発言とは思えんな」



こんなイケメンに抱きしめられるシチュエーションってそうそう巡り会えないよね。しかもベッドの中。キャー、なにするのー!みたいな反応した方が美味しいのかな?むむむ、選択肢が多すぎ。



「本当に襲っちまうぞー」
「ほぎゃ!」



くるんと体が回り、ぽふっと柔らかい何かに当たる。そして気付けばあたしがピオニーを見上げる形になっている。え?組み敷かれてるってやつ?



「普段はおかしな奴だが、どんな反応を……ぐあっ!」



大きな手があたしの頬を撫でた瞬間。眉目秀麗な顔が一気に崩れた。何事だと視線を動かすと、なんて言ったらいいのかわからない表情を浮かべたジェイドが堅そうなファイルでピオニーの頭を殴っていた。



「朝から何盛ってるんですか」
「て、てめぇ…」



皇帝にこんなことが出来るんだからすごいな。殴られたピオニーは大人しくあたしからどいた。うーん、ちと惜しい。



「惜しいじゃありません。ヒカリ、あなたも不用心ですよ」
「すみませーん」



なんか機嫌が悪いような?朝見たときはそうでもなかったのに。



「おまえ、わかりやす」
「何のことですか?」



二人の会話が何のことですか?なんですが。結局わからないままで終わってしまった。





((そんな朝の事情です))



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