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これは終わりじゃなくて始まりなんだ





「えへへへっ、三人とも本当にありがとね」



まさかこんなサプライズが待ってるとは思っても見なかった。いつもバカばっかりやってるあたしなのに。早速ガイとピオニーからもらったイヤリングとネックレスを付けてみる。似合うかな?と照れ混じりで訊ねれば三人とも満足げに微笑んだ。



「喜んでもらえて何よりです」
「こんなんされたら帰りたくなくなっちゃうよ」



何気なく出た言葉にジェイドたちが急に黙った。驚いたように目を見開いてあたしを見ている。自分の言葉が原因なんて思わず、どうしたの?と首を傾げる。



「帰りたいか?」
「へっ?」



ピオニーの問いの意味が分からず変な声を上げてしまう。ジェイドもガイも困ったような何というか複雑そうな表情を浮かべていた。



「……あー」



少し間を置いて理解した。あたしとしてはその問の答えを口にする方が複雑で、困ってしまった。正直なところ帰りたい半分、帰りたくない半分。だから困っている。ここでの暮らしは何だかんだ楽しくてもう慣れてしまって。でも両親や友達にも会いたいのは間違いなくて。



「……半分半分かな」



嘘を吐いても仕方ない。絶対にジェイドには見破られるんだし。いっそ記憶をなくしていれば帰りたいとか思わないだろうに。



「そう、だよな」
「馬鹿な質問をしました」



三人に悪気ははない。それだけこの生活が当たり前になってるんだ。あたしとしてはそれに不満は何一つない。



「ううん。あたしはこんなイケメンに囲まれた生活できるのは悔いはない!」



だって大好きなキャラたちと一緒に生活して、仕事して、こんなサプライズまでしてもらったらそりゃ後悔なんてないでしょ。まあ、だから帰りたくないとも思ってしまうんだけど。



「帰れなきゃ帰れないで構わないし、帰れちゃったら……それもまた仕方ない、かな?」



オールドラントに来てしまったのだって奇跡なんだから。まさかあんなんでトリップしちゃうなんて思わないし。ただ自分でそんなこと言っておいて何かぐるぐるしたものが胸の辺りをなんか弄られたような感覚に陥る。気持ち悪いような、何て言うか。



「ヒカリ?」



何かの予兆?と感じてしまったのはきっと必然なんだ。



「おまえっ!?」
「ヒカリっ!」



普段しないようなことはするもんじゃない。その感じが体中に浸透すれば理解したかのように自分の手を見た。少し透けて見える自分の手を。



「タイムアップ……なのかなぁ。よくわかんないけど」
「なに暢気なことを言ってるんだ!」



その手を見つめながら悟ったかのように言えばガイが激怒する。とは言えこうなってしまったらどうしていいのかなんてわからない。



「ガイ、落ち着いてください。ヒカリ……」
「急で寂しいけど、帰んなきゃいけないみたいだね」



トリップのも急なら帰るのも急なんてなんて都合の悪いものなんだろ。嫌な予感を感じても口にしちゃいけないんだな。教訓にはなったけど、あれは無意識だったし。暗示だったってことなのかな?



「あと四年経ったら俺の嫁にしようと思ってたのにな」
「なぬっ!?何てもったいないことぉぉぉーっ!」



消えかかった手で頭を抱える。そんな美味しいシチュエーションを目の前で逃すなんて、ヒカリちゃん一生の不覚。



「俺も残念だよ。やっとヒカリに触れれるようになったのに」



泣くまではいかないけどそんな風に表情を歪めたガイがあたしの頬を両手で挟む。肩にぽんっと手を置かれたことはあったけど、ここまで直接触れられたのは初めてかも。ガイの手は全く震えてなくて、それにはビックリした。



「やっとこれからと言うところだったのですがね」



残念です。と苦笑するジェイド。三人ともさっきまでの笑顔が全くない。こんな別れ方は、嫌だ。



「ジェイド!ガイ!ピオニー!」



すでに消えてしまって見えない両手を腰に当てる。大声を出せば三には驚いたようにあたしを見る。



「スマーイル!これが今生の別れじゃないよ!」



あたしの言葉の意味が分からないのか、口を開けて少し首を傾げる。



「あたしは絶対にもう一度オールドラントに戻ってくるよ」



だからそんな顔をしないで。いつもみたいに笑っていて。楽しくないのは嫌だ。



「約束!」



これ以上はないってくらいの笑みを浮かべれば、目を瞬かせた三人は笑顔を返してくれた。そしてあたしの視界から三人は、消えてしまった。





((これは終わりじゃなくて始まりなんだ))

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