自分はてっきり、鏡でも見ているのかと思った。
「…?」
右に首を傾げると、向かい側の私も左に首を傾げる。
寸分違わぬ動きだったが、その人は私より些か身長が高い。
「鉢屋先輩…何やってるんですか」
「チッ…バレたか」
「まあ」
依然、顔はそのままで、眉間に皺を寄せた鉢屋先輩を見る。
不機嫌な時の私は、こんな顔をしているのだろうか。
「……綾部」
「何ですか」
「そんなに見詰めるなよ、うっかり恋に落ちたらどうしてくれる」
「笑えない冗談ですね」
本当に、笑えない。
先輩の趣味とか、センスとか。
「お前、流すにしてももうちょっと傷付けないようにだなぁ…」
「先輩も傷付くんですね」
「…私を何だと思ってる」
「変(装名)人ですか?」
外れてはいないと思うのだが、思いっきり嫌そうな顔をされた。私の顔で。
「変装、やめてください」
「ヤダって言ったら?」
「不破先輩を呼びます」
「ごめんなさい」
私の顔が、あっと言う間に不破先輩に早変わりした。
「綾部」
「何ですか?」
「お前って鈍いの?」
「はい?」
「こんなに好き好きオーラ送ってるのによー」
思わず「気持ち悪いです」と言いそうになるのを、ぐっと堪えて鉢屋先輩を見た。
「鉢屋先輩」
「何だ、綾部」
「死んでくださ…あ、間違えた」
「お前何がしたいの…」
オーラだけじゃわからない
(はっきり言うんだ男なら)
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わかってるのにわざと意地悪するのが綾部流
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