「大変だぁ」
あんまり大変そうじゃなさそうに、年上の同級生が間延びした声で言った。
私はなにが大変なんです、と尋ねた。
「毎月12日は豆腐の日なんだって」
「へぇ」
「兵助くんに、豆腐あげるの忘れた」
久々知先輩の名前が出て、私は少し気分が落ち込んだ。
先輩と豆腐には嫌な思い出がある。
顔には出さなかったけれど、それなりに傷付いた。
「私、久々知先輩に豆腐をあげたことがあるんですけど」
「うん?」
「『俺は豆腐なんか好きじゃない』、って突き返されたんです」
タカ丸さんが目を見張った。
先輩が豆腐が嫌いだったことに驚いたのか、はたまた私が先輩に豆腐を贈ったことに驚いたのか。
突き返されたことに驚いたのか。
「綾部くん」
「なんですか」
「今から兵助くんのところに行こう」
「何故です?」
「豆腐顔にぶつけてやる」
はい?と聞き返す前に、タカ丸さんは私の手を掴んで、逆の手には豆腐を持って、ずんずん歩き出していた。
やっぱり歩幅はタカ丸さんのほうが広くて、私はついていくだけで精一杯だった。
でも何とか足を止めさせることに成功すると、こう尋ねた。
「何故そんなことをするんですか
タカ丸さんは、先輩のことが好きでしょう」
「うん」
私にはこの人の不可解な行動が全く理解出来なかった。
勿論、その後に続いた言葉の意味も。
「でも綾部くんのが好きだもん」
「……なんですか、それ」
私の問いかけに、そうだな、とタカ丸さん。
「兵助くんのことがこのくらい好きだったら、」
両手で肩幅くらいの長さを作る。
「綾部はこのくらい好きってことだよ」
今度は両手をいっぱいに伸ばした。
「だから、兵助くんが綾部くんのことを傷付けたなら、俺は兵助くんを攻撃出来るってことだよ」
「じゃあ攻撃しないであげてください
私はタカ丸さんが傍に居てくれればいいですから」
紙一重
(友達なのか恋人なのか)
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拍手文の久々知←タカ綾
みたいな
ふたりとも久々知が好きだけど
でもタカ丸はやっぱり綾部好きだし
綾部もタカ丸好き
この構図が好きです
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