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そらばけ
窓際の前から3番目


「あ゛ー……」

机に突っ伏すと、一緒に魂まで抜けそうな声が出た。出席には間に合わず…そうなれば、もう5分後に来ていても変わらない――つまりは、あたしの走り損だ。
ちくしょう。担任め。いいじゃねぇか。20秒ぐらい。なぁにが、

「20秒だろうが、遅刻は遅刻だ。5分前に来てろ。」

「…………なに?嫌み?」

じろり、とあたしの背後に立ち、わざわざ声マネを披露してくれた少女を睨む。…いや、正確に言えば立ってはいないか。浮いている、の表現が正しいんだろう。きっと。擬音語を付けるなら、『ふよふよ』が似合うそうなほど見事にその少女は宙に浮いていた。
いわゆる…幽霊。ゴーストだ。
どういうわけか、見えているのはあたしだけらしい(以前そのことを友達に話したら笑われたことがある)。

「あきら、おはよー。寝坊?」

「うるせー。メールで代返頼んだのに…。」

「ああ、それ?ごめん、さっき気付いた。」

床に足がついている友人は悪びれる様子もなく笑いながら手元の携帯画面を見せる。そこには『新着メール1件:あきら』の文字。
こいつ、開いてすらいねぇ。ちなみに幽霊の話を笑い飛ばした友人というのも彼女だ。

「お詫びと言っちゃなんだけど…食べる?」

そう言った彼女の手にはコンビニの袋が握られている。大方、自分用の朝ご飯兼おやつ用に買っていたやつだろう。証拠に、袋の中には小さめのパンがいくつも入っていた。
適当に取り出したそれをくわえると、ほのかにチョコ味が口の中に広がっていく。

授業の準備をしながらおもむろに窓の外へ目をやると、いつものように青空が広がり、いつものように雲が流れ、いつものように鳥が飛び交っていた。

そして、いつものように楽しげに井戸端会議をする幽霊たちの姿に軽い脱力感すら覚えながら、今日も一日がスタートした。

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あきゅろす。
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