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月並みのラブソング

携帯が震えて、置いていた机に共鳴し響く意外な音の大きさに俺は思わずびくりとしてしまった。誰だこんな深夜にメールをよこしたのは。開くと壁紙に表示されている日付けが変わり、もう木曜日になっている。
メールを起動して、中身を見ないうちにうんざりした。ジャズバーのオーナーからだ。あの娘(こ)と仲良くなる助けになるかと思ってアドレスを交換したのは間違いだったかもしれない。結局替わりの恋はうまくいくはずもなく、本命にまで嫌われた。その上寝ようとしている時間にメールが来る。
どうせ割引してやるから来いとかそういう客寄せメールだろうな、と思って、開封済みにだけしておこうと碌に件名も見ずボタンを連打した。添付ファイルはクーポン券の画像か何かだろうか、と思った一瞬後、脳みそが沸騰した。
写真だ。見覚えのある店内。カウンターに散乱した形も様々なグラスの数々。薄暗いから携帯のカメラではそうはっきり写っているわけではない。それなのに、俺の目にはくっきりと見えた。
あまり飲めないはずの酒に囲まれて、桃色に染まった月が突っ伏して眠っている。
スクロールして食い入るように見詰める。思わずその写真を保存しようとして、慌てて思い出し文面を読んだ。短い。
「早くこねえと喰っちまうぞ」
冗談じゃない!
俺はもう泡をくって、寝巻きのTシャツはそのままに下のズボンだけ履くとマンションを飛び出した。
携帯に定期と財布がくっついてる時代で本当に良かった。


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あきゅろす。
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