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PARODY
再会〜Boy meets boy again〜Side.N

「ニール?なんか今日そわそわしてね?」

彼と約束した日から2日、今日が約束の金曜日。3限目と4限目の間の休み時間にリヒティに尋ねられた。

「そんなことねえよ」

「あるだろ」

否定すると、ラッセがたたみかける。

「早弁までして……昼休みに何かあるのか?」

「本を返さなきゃなんなくてさ」

「んなの昼休み飯食ってからでいいじゃん」

「ん〜ちょっと約束しちゃったしな」

「約束?」

「そう、多分1年生だと思うけど。同じ本を取り合っちゃって。俺が先に借りて、今日返すって約束した」

「へえ」

「っていうか大人気ねえな。先に貸してやれよ」

二人は口々に言う。

「で、それ可愛い子?」

「可愛い…っていうよりかは美人だったな」

「へえ…」

「でも、そいつ男だぜ?」

「マジか?」

「いやにそわそわしてるから、てっきり可愛い女の子かと思ってた」

「いや、だから別にそわそわとかしてないから」

「そいつ名前は?」

「知らない」

「は?」

「知らない…って……そいつ本当に来るのか?」

「約束破るような感じでもなかったぜ?」

「そういう問題でもないだろ」

まあいいや、とラッセは呟く。

「じゃあ、今日の昼休みは図書室ってことだな」

昼休みのサッカーに俺が不参加だということを確認すると、ラッセは他のやつらに声をかけに行った。

「ああ」

確かに、名前も知らない相手をこうも信用していいのかという気もするが、まあ来なければ普通に本を返却するだけだ。





昼休みになると、俺はすぐに教室を出ていった。向かう先は図書室。
別に急ぐ理由も必要もないのだが、何故だかあの子がひとりで図書室にいるイメージがちらつく。

図書室が見えるところまで来ると、その扉の前に紫のさらさらとした髪のすらりとした後ろ姿の彼がいた。一瞬、胸の鼓動が跳ねる。彼は図書室の引き戸に手をかけようとしていた。

「あれ?」

俺に声をかけられ驚いたように振り向いた彼は、記憶にあるよりも美しかった。男相手に失礼かとも思うが、彼には美しいという形容詞が良く似合う。いや、足りないくらいか。
思っていたより俺が早く来たのか、じっと固まってしまった彼にそっと声をかける。

「早かったな」

自然と笑みがこぼれるのが自分でもわかる。こんなところで立ち話もなんだし、と図書室の中へと彼を促し入って行く。

「まだ誰もいねえな」

俺は図書委員すらいない図書室を見回す。

「フェルト・グレイスも僕が教室を出る時にはまだ教室にいました」

声をかけてくれば良かったのに。ふとそういう疑問が頭の隅によぎったが、別に聞かなければいけないことでもないかと、そうかと呟いた。
なんとなく間が持たなくなった時に、彼がぽつりと言った。

「名前……」

そういえばまだ自己紹介もしていなかったということに気がつき、俺は自分の名をつげる。

「俺はニール・ディランディ。3年だ。お前さんは?」

「僕は、ティエリア・アーデです。1年です。よろしくお願いします。えと……ディランディ先輩?」

真面目な顔をして先輩と呼ばれて、俺は思わず噴き出した。

「ニールでいい」

何故笑われるのかわからないという顔をした彼に、俺は言った。

「ニールでいいよ。先輩もいらない。みんなそう呼ぶし。お前さんはティエリアでいいか?」

彼は恥ずかしそうに笑いながら頷く。
素直なその様子が年相応の可愛らしさを見せて、俺は俺とは頭1つ分以上の差がある彼の頭を撫でる。

「よろしくな、ティエリア」

その後、本が好きだという彼と本の話をしていると、フェルトがやって来た。フェルトは遅くなったことを詫びて、俺は本をティエリアに渡した。
これで俺の目的は果たされはずなのだが、なんとなくティエリアと離れがたくて、図書室に居座ってしまう。
しかし、昼休みももう残り10分になると、そろそろ戻らなくてはという気持ちになる。きっとティエリアがそれを言い出せないのは、先輩である俺に気を使ってのことなのだろう。それでも、もう少し長くいてもいいかと思ってしまう。
そんな時に聞こえたのは、聞きなれない男の声だった。

「ティエリア」

「次は生物室に移動だろォ」

「ティエリアの教科書とかも持ってきたから、そろそろ行かなくちゃ、ね」

そこには同じ顔をした二人の男子生徒がいた。ティエリアは曖昧な返事をする。

「ああ……」

俺は妙な顔をしているように見えただろう。一瞬頭をよぎった考えにどう対処していいかわからなかったのだ。

こいつらは、ティエリアのなんなんだ?

すぐに自分でだした友達だという結論でさえも、なにか俺を苛立たせる。
そんな俺に気づいたのか、二人のうち気の強そうな方が俺を睨んでくる。その目は、俺への敵意というよりはティエリアを傷つけるやつは許さないと言っているようで。

「あの、ありがとうございました」

ティエリアの控えめな挨拶が聞こえて、我に返る。

「ああ……また、な」

表情が緩むのを自覚しながら、彼の触り心地の良い頭を撫でる。

「はい……」

ティエリアが嬉しそうな顔をするのがただ単純に嬉しい。またな、という挨拶は、必ず次があるということで。

「では、また」

浮かべられた笑みに、くすぐったいような痛いような気持ちになる。
ただ…あの双子が気になる。また気の強そうな方と目があった。俺の本心を見抜こうとするような目。きっと、彼らに大事にされているのだろう。







(笑顔も、泣き顔も、全部彼らは知っているのだろうかと思った瞬間感じた、強い独占欲。恋というよりは、きっとお前に落ちていた)







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