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PARODY
再会〜Boy meets boy again〜Side.T

「ティエリア?なんか今日、そわそわしてない?」

彼と約束した日から2日、今日が約束の金曜日。3限目と4限目の間の休み時間にアレルヤに尋ねられた。

「そんなことはない」

「あるだろォ」

否定すると、ハレルヤがたたみかける。

「珍しく早弁までして……昼休みに何かあるの?」

「何もない……っただ……ちょっと借りたい本があって………」

彼のことを言うのはなぜだか恥ずかしくて、当たり障りのないことを言ってしまう。

「フェルトに頼んでおけばとっておいてくれるんじゃない?」

アレルヤは親切心からなのだろう、フェルトに声をかけようとしたので僕は思わず本当のことを言ってしまう。

「ダメだっ……約束、してる、から……」

「「約束!?」」

二人は声を揃えて驚いたように言う。

「それって……誰と?」

先に口を開いたのはアレルヤだった。僕は口を噤んでしまう。僕は、彼の名前すら知らないのだ。

「……知らない」

「知らないってどういうことだァ?」

「知らないけど、彼が借りた本を次は僕が借りることになっている」

「それは……」

二人は困ったように顔を見合わせる。

「大丈夫だ。彼は先輩だ。困っている後輩に助け舟を出してくれただけだと思う……」

自分でもなぜこんなに必死になっているのかわからないまま、僕は必死にその時の状況を説明して彼の弁護をしていた。

「行ってくりゃいい」

そう言ったのはハレルヤだった。

「ハレルヤ!?」

アレルヤは慌てたように言うが、ハレルヤは飄々とした様子で返す。

「いつもより早めに図書室に行くだけの話だろォ」

「だけど……」

アレルヤはまだ渋っていたようだが、ハレルヤに何か耳打ちされて仕方なさそうに頷く。

「あんまり、慌てて行かないようにね」

アレルヤの言葉に一も二もなく僕は頷く。




昼休みになると、僕はすぐに教室を出ていった。向かう先はもちろん図書室。
僕の中の理性は急ぐ必要などないと言っているが、急がずにはいられない。

図書室の前で一度足を止めて、息を整える。図書室の引き戸に手をかけようとした時だった。

「あれ?」

低く心地よいテノールが後ろから響く。驚いて振り向くと、そこには彼が本を片手に立っていた。
まさかこんなに早くに来るとは思っていなかったので、僕はしばらく固まってしまった。

「早かったな」

彼は笑いながら言うと、こんなところで立ち話もなんだし、と図書室の中へと入って行く。僕はそれについて行った。

「まだ誰もいねえな」

彼は図書委員すらいない図書室を見回す。

「フェルト・グレイスも僕が教室を出る時にはまだ教室にいました」

彼は、おや?という顔をしたが、特に何も問わず、そうかと呟く。
なんとなく間が持たなくなった時に、ふと彼の名前を知らないということを思い出した。

「名前……」

思考と同時に言葉が漏れていたらしい。彼はああ、という顔をして優しいテノールで言う。

「俺はニール・ディランディ。3年だ。お前さんは?」

「僕は、ティエリア・アーデです。1年です。よろしくお願いします。えと……ディランディ先輩?」

彼はぷっと噴き出すと笑って、ニールでいい、と言った。

「ニールでいいよ。先輩もいらない。みんなそう呼ぶし。お前さんはティエリアでいいか?」

僕は頷く。
彼は嬉しそうに笑うと、彼とは頭1つ分以上の差がある僕の頭を撫でる。

「よろしくな、ティエリア」

その後、本が好きだという彼と本の話をしていると、フェルト・グレイスがやって来た。彼女は遅くなったことを詫び、僕は目的の本を手に入れた。
これで僕の目的は果たされたし、約束は守られた。それでもなんだかまだここに……彼と一緒にいたくて、図書室に居座ってしまう。
しかし、昼休みももう残り10分になると、そろそろ戻らなくてはという気持ちになる。それでも自分からは言い出せなくて、時間など気にしていない振りでニールと話をする。なぜだかニールも何も言い出さない。
そんな時に聞こえたのは、聞きなれたアレルヤの声だった。

「ティエリア」

「次は生物室に移動だろォ」

「ティエリアの教科書とかも持ってきたから、そろそろ行かなくちゃ、ね」

アレルヤとハレルヤが、僕を心配して来てくれたのだ。いつもはありがたいと思うその行動すら、今は少しいとわしい。

「ああ……」

僕は曖昧な返事をする。
ふと見るとニールは僕らを妙な表情をして見ていた。

「あの、ありがとうございました」

ニールとまだ言葉を交わしたいと思いながら、言葉をつなぐ。

「ああ……また、な」

ニールは表情を緩め優しく言い、そして僕の頭を撫でる。

「はい……」

またな、という挨拶が、本当に次に繋がっている気がして、嬉しかった。

「では、また」

次に繋がるよう、願いを込めて伝えた、言葉。







(彼のそばはとても居心地が良くて。僕は手放せなくなってしまったのです)







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あきゅろす。
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