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PARODY
出逢い〜Boy meets boy〜Side.N

彼との出逢いは、図書室だった。

俺は、昼休みに時々図書室に行っていた。その日も昼休みのサッカーに誘われたものの、そろそろあのシリーズの新刊が入っている頃だと思い、図書室へと向かった。


「フェルト」

図書室に入るとフェルト・グレイスに声をかけた。彼女は、1年生だが良く図書委員として図書室にいるので、いつの間にか顔馴染みになったのだ。それに、彼女を見ているのは、親の仕事の事情で遠くで暮らしている妹を見ているようで楽しい。

「新刊、入ったか」

「ええ。でも、先客がいるかも」

フェルトにそう言われて、俺は少し急いでそのシリーズが置いてある棚へと向かう。
そこには誰もおらず、俺は急に気が抜けた。そしてその本を見つけ、取ろうと手を伸ばす。すると、ちょうどその本のところで、他の手と重なった。


―その手の持ち主こそ、ティエリア・アーデだった。


俺は、しばらく彼の顔を見つめてしまった。学ランを着ていなければ、女子かと思うほどの美人、いや、美少年だったからだ。
彼は、どうすればいいのかわからないのか、俺の顔を見ている。そりゃあそうだろう。彼はその学ランの新しさからどう考えても新入生だったし、それが明らかに上級生だとわかるような相手と本の取り合いなどはできないだろう。

「お前さんも、この本借りたいのか?」

とりあえず話しかけてみると、小さく頷く。その様子が初々しくて、可愛かった。

「そうか……でも、俺もこのシリーズの新刊楽しみにしてたしなぁ……」

言ったあと、これじゃあ俺に先に貸してくれと言っているようだと気づき、彼が何かを言う前に更に言葉を重ねる。

「じゃあジャンケンでもするか!」

「ジャン、ケン……?」

「そそ、平等だろ?」

と言って、俺は勝手にジャンケンを始めた。

結果、彼がグーで俺はパー。

「じゃ、悪いけど俺から借りるな」

これで平等だろうと思い、彼を見るとなんだかぼんやりとしている。俺はなんだか悪いことをしてしまったような気がしたので、彼に提案した。

「う〜ん……じゃあ、今日が水曜だから、あさって!金曜の昼休みに返しに来るから、その時借りろよ。これなら、誰かに借りられることもないだろ?」

彼はこくりと頷いたので、俺はなんだか嬉しくなった。

「じゃあ、約束なっ」

「やくそく……」

くり返して呟く彼に、俺は微笑む。

「そ、じゃあ、また金曜日に」



「それにしても綺麗だった……」

なんとなく年齢よりも大人びたその美貌に、少し幼い言動というアンバランスさが更に彼の魅力を引き出しているようだった。
そして、どこか不安そうに揺れていた瞳を思い出す。


なんで、こんなに気になる?
年下の、しかも男。
それでも、金曜日を心待ちにしている自分が、ここにいる。






(あれは、もしや一目惚れだったのか?)






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あきゅろす。
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