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07わからないことだらけ




「あれ、お前アップルパイは?」


とぼとぼと教室に帰ると宍戸と長太郎が机を挟んでランチ中。おうおう長太郎のやつ美味そうなもん食べてるじゃないか。お母さんの手作り感溢れてる。一方宍戸は相変わらずコンビニのパンを頬張り長太郎に貰ったのかミルクティーを飲んでいる。
目が合うとにこりと笑ってこんにちはと挨拶をする長太郎とは逆に、いきなり帰ってきた私に驚いた様子の宍戸はキョトンとした顔で私を見ている。そりゃ驚くか。さっきあんなに嬉しそうにアップルパイを抱えていた私が手にお弁当包みのみの状態でしかもこんなにも早く帰って来たんだから。



「ん、ああアレね…岳人とジローにあげちゃった」

「はあ?あげたぁ!?」

「うん」

「もらいもんをあげんなよ…」

「アップルパイってあの跡部さんからのやつですか?」

「ああ…」



はあーっとため息をついて宍戸は頭を掻く。アホかお前なんて言われた。いや、私は絶対宍戸より成績優秀だと思う!そう言ったら宍戸のヤロウ、「そういうことじゃねえ」と更に深いため息をした。



「美味しいですよ、本場の味は」

「…急に食べる気なくなっちゃって。岳人たちに会ったからたまたま、ね」

「向日先輩たちあれ大好きですからね」

「だからってよ、岳人もジローも…ったく…」

「まあまあ宍戸さん」



しきりにため息をつく宍戸を宥めるように長太郎が言った。けど長太郎自身も困ったように眉を下げているみたい。別にいいじゃんもらったわけだしもう私のモノ。誰にあげようが問題ないはず。しかも跡部だし、きっと私にもあげたくなかっただろうし岳人たちが貰ってくれてむしろ良かったんじゃないか?嫌いな人に無理してあげるより好いている人に食べてもらった方があいつも嬉しいだろうし。

なんだか微妙な空気が三人の間を流れた。が、昼休み終了のチャイムがそれを断ち切る。長太郎は少し慌てた様子で失礼します、また部活でと柔く微笑むと急ぎ足で教室から出て行った。食堂から帰って来る生徒が増えて教室内も少しずつ賑わいを取り戻しつつあった。
…うん、気まずい。なんかよくわからないけど宍戸はあれから不機嫌だし唯一の頼りのジローもまだ行方不明。友達の少ない私はどうすることも出来ずしぶしぶ自分の席に戻った。
(早く帰って来てよジロー!)




しかし願い届かず、ジローは帰りのホームルームにすら現れなかった。相変わらず宍戸とは微妙な雰囲気が流れている。うう、やりずらいなあ。しかももう部活。さらに気分が落ち込む。

さようなら、の言葉を合図に生徒たちは一斉に行動を始めた。いつもならここで宍戸に行こうと絡むのだがどうも今日はやりにくい。



「…唯子、俺今日掃除あるから。わりいけど跡部に遅くなるって言っといてくれ」



いつもと変わらない様子でそう言うもんだから私はビックリして悪態もつけずに普通にうん、と頷いてしまった。なんだ宍戸のやつ普通じゃん。


とぼとぼひとり人気の少なくなった廊下を歩いていたら前方から見慣れた人影。オーラのようなものをひしひしと感じる。

…跡部、だ。


跡部は私に気付いたのかふいと顔を上げ私と視線が交じった。その途端急に全身が冷たくなった。冷や汗が頬を伝う。

いつもの、跡部の、感じじゃない。何か違う。氷のような冷たいオーラが私を突き刺した。



「あ、あとべ…」



その感じに堪えられず口から出たのはあいつの名前。跡部は一瞬目を見開いたがすぐに私から目を反らし、足早に私の横を通りすぎて行った。その時の、跡部の切なそうな表情が脳裏に焼き付く。

足音が聞こえなくなるまで私はその場から動けなかった。名前を呼んだのに、何の反応も無かったことに少しショックを覚える自分がいる。




「…意味わかんない…」



ああもう、今泣けって言われたら泣ける気がする。




(自分がわからない、)




next.


***


ようやく七話来ました。うっすらシリアスですなあ…。
ていうか跡部連載のはずがあんまり跡部出てないし接触してないっていう(笑)

さあ、次回はどうなる!?←



管理人:あいの






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