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06意味不明のイライラ




「はあー、今日も部活かあ」

「おいそれがマネージャーの言う言葉かよ唯子」



昼休み、つまらない現代文の授業を終えて弁当袋を手に引っ掛けながらそう呟いたら宍戸に怒られた。まあ宍戸は部活が大好きだからねえ。長太郎は可愛いし。あんな可愛い子とダブルスだなんて羨ましいかぎりだ。そう言ったらバカじゃねえかって変な顔されたけどね。




「なんだかんだ、お前楽しそうじゃねえかいっつも」

「そう?」

「おう。俺が見た時はだいたい向日かジローと遊んでるしな」

「…ちゃんと仕事してるし!」

「別に疑ってねえよ」




机に頬杖を付きながらカバンからコンビニ袋を取り出してパンにかぶりつく宍戸。アップルパイ…いいなあ欲しいって言ったらくれるかな。悶々とひとりで考えてたらあからさまに嫌な顔をした宍戸に睨まれる。宍戸はひとつ、大きなため息をついてから袋をガサガサと鳴らし中からもうひとつパンの袋を取り出した。…アップルパイ!




「くれんの?」

「俺のダチがよ、お前にも持ってってくれって。俺は昨日食ったし」

「マジで?宍戸の友達くんありがとう!」




アップルパイひとつでなんてげんきんなやつなんだ私は。自分でも思うよ。宍戸は呆れたように笑いながらほらよ、と紙包みを差し出す。なんだか高級そうな包みだ。

ありがとう!と再度宍戸にお礼を言ってから上機嫌に教室から出た。外では早英が不思議そうに私を見ながら首を傾げていた。どうしたのって聞かれたから宍戸にアップルパイ貰ったんだよ、ってニコニコ顔で答えたら数秒の沈黙の後にふーん、となんとも冷たい返事が返って来た。




「でもすごい高級そうな包みだよね」

「そうじゃなくて高級なの」

「へえそうなんだ…って…え!?」



知らなかった?だなんて普通の表情で答えられたもんだからただ驚くしかない。これ…そんな高級なの?いくら?ただでもらうなんか今になって気が引けて来る。宍戸の友達にそんな高級な人いたっけ。宍戸って氷帝でも基本庶民的な人との付き合い多いからなあ。まあみんないいヤツばかりだけど。

なんか手にこんな高級なもの持つなんて体質に合わなすぎて蕁麻疹が出そうだ。あ、やばい緊張してきたかもしれない。




「あーっ、唯子のヤツあのアップルパイ持ってんぜ!」

「ほんとだC!」

「あ、ジローに岳人」



腕に大量のパンやらお菓子やらを抱えた氷帝テニス部の元気っ子ふたりが目の前から走って来る。




「それ美味いよな」

「がっくん知ってんの?」

「当たり前だろー!俺も貰ったしよ」



なーっと顔を見合わせて頷く二人。二人も貰った?ってことは宍戸も岳人もジローも仲良しな高級な友達ってことか。…いたか?そんなヤツ。

ひとり誰だろうと考えていたら、次にジローが言った一言に衝撃を受けた。





「それ、跡部からのお土産だC」

「確か跡部の父ちゃんから送られて来たんだよな?」

「あ、そうそう!」






跡部から?え?いやいやありえないでしょ。頭がショートしてパニック状態だ。





「テニス部全員分はないからレギュラーだけにくれたんだよね」

「おー」



相も変わらず楽しそうに会話を続ける二人の横で私はひとりワケを考えていた。考えた結果こうだ。
全員分ない→レギュラーだけ→レギュラーと仲が良いマネージャーの私にも一応渡しとくか的な。

うーん、我ながらナイスな思考だ。かなり自嘲気味だけど。だって普通に考えたらありえないじゃん。だって跡部だよ?跡部は私を嫌ってるんだからわざわざお土産なんて渡さないでしょ。しかも宍戸経由してまで。

本当は嬉しいはずなのに言葉と体は嘘を付いてしまう。気付いたら私はアップルパイの入った紙包みをジローに差し出し、あげると言ってしまっていた。
二人はなんの迷いも疑いもなしにやったぜなんて言いながら私から紙包みを受け取ると嬉しそうに走って行った。早英はなんとも言えないような微妙な表情で私を見ている。




「…いいの?あげちゃって」

「いいの」

「貰い物、なのに」

「いいの!」



しつこく聞いてくる早英の言葉に、というかよくわからない自分にイライラしてしまって思わず声を荒げてしまった。



「、ごめん…」

「…いや、私こそ…」



沈黙が痛くて私と早英の間には微妙な雰囲気が流れる。今日はひとりで食べるねといつもより低い声で言えば早英は何も言わずに頷いてふいっと向きを変えて自分の教室へと戻って行った。ごめんね早英。よくわからない自分に無性にイライラしてあたっちゃって。頭冷やさなきゃなあ…。

深呼吸を二、三回してまず落ち着いてからぱしんと頬を叩いて切り替える。


あーあ、最近おかしいや自分。




自分自身にいっぱいいっぱいだった私は、3年A組のドアの影で跡部が全部聞いていたなんてこと全く知らなかった。




next.


***


長い!!←

10話ぐらいまでに終わらせられるかなあ…頑張んなきゃ。
さて、ヒロインちゃんと跡部の関係は一体どうなっていくんでしょうか?まだよくわかりません(笑)


管理人:あいの







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