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05楽しい時間、これで十分



予鈴が鳴って、侑士は教室へと戻って行った。私が一緒にサボらない?って誘ったらアホぬかせ、と断られた。
…あーあ、結局一人でサボりか。
現代文の授業なんてつまんなくて出ていられない。
また宍戸に怒られるなぁ。



なんて考えていたら、ガチャリと部室のドアが開いた。
誰だろ?
ふと顔を上げたとき、入って来た人物を見て硬直してしまった。
向こうも驚いてる。


「…あ、跡部…」

「…すまねぇな、俺で…」


驚いた顔になったかと思うと、すぐにいつものクールな表情に戻った。
跡部が謝るなんて…と思っていたら、跡部はロッカーから忘れ物らしきものを取り出して足早に部室から出て行った。
そんなイヤかなぁ…私が言えることじゃないけど…。

って、今授業中じゃん。
珍しい。跡部でもサボるのかな?

いや、真面目で責任感の強い跡部のことだからきっと生徒会の仕事でもあるんだろう。よく部長と生徒会長を両立出来るなぁ、と私は感心する。
大変じゃないのかな。



「(ま、私には関係ない…)」



私はひとつため息をついてからソファに寝転がった。

私は、跡部が苦手。
跡部は、私を嫌い。

うん、そうそう。私が跡部を今更気にかけてしまう理由はわからないけどそれだけは変えようのない事実で。
実際さっきの一瞬だけなのに大量の冷や汗が吹き出している。跡部のあの嫌そうな顔も脳裏から離れない。



…なんかもう授業に出る気しなくなったな…。体が重い。

もういいや、と思いそのまま私は部室で部活開始時間まで眠りについていた。
しつこく鳴る宍戸からのメール着信をする携帯を無視しながら、何故かもやもやしたまま…。











「あれ、早いですね唯子さん」

「ん…あ、長太郎ー?と若かぁ…」

「こんにちは」

「松永先輩のことですからサボりでしょう」

「せいかーい」



かちゃり、という音に目覚めた私の目の前には後輩の鳳長太郎と日吉若の姿。
爽やかな笑みを浮かべる長太郎とは逆に来て早々毒舌全開の若。
真逆な二人だけど…仲良いのかな?




「…あ、そういえば唯子さん。宍戸さん、半ギレ状態だったんですが…何かあったんですか?」

「多分サボりのこと。メール無視しちゃったしさ」

「……宍戸先輩に同情しますね」

「わーかーしー」

「近寄らないで下さいよ。アホが移ります」

「仮にも先輩に向かって!」

「『仮にも』ですよ」

「ーっ!」

「! まあまあ落ち着いて日吉…」

「…全く、相変わらず日本語に弱いですね、貴女は…」


私が劣勢のときに必ず助けてくれる長太郎とトドメを刺す若。
あからさまに呆れます、とでも言いたいような目線にムカついて若に抱き着いたら耳赤くして焦り出した。
そうそう、若はコレに弱いんだよね。
まーたそこが可愛いんだ。





「あー、また唯子が日吉のヤロウを襲ってるぜ侑士ー」

「ほんまやなぁ。ほなとりあえずやめよか、唯子」

「…う」


突然入って来た侑士に首根っこを捕まれて引きはがされた。
…男の力に勝てるワケないじゃない。



「全く貴女という人は…」


真っ赤な顔していう若。
それが面白くてがっくんと二人でからかって遊んでいた。



ほんと、毎日が楽しい。
テニス部とみんなとワイワイやって早英とバカやって…。

一時期は辛い時もあったけど、今はこの非凡な平凡が1番!







…跡部のことは……、やっぱり気になるけど……。





「……景吾…」



普段呼ぶことのない名で呼んでみたけれど、さーっと全身が冷たくなる感じがした。
やっぱり私は跡部が苦手!
それに変わりはない。




「あーもう、やめやめ!」

「どうしたんだよ唯子」

「岳人には関係ないことー」

「おい、なんだよそれ!」



今はこの楽しい時間だけで十分だ!




next.


***

5話でーす!
ちょいシリアスになりかけた…。
跡部との関係は一体どうなるんでしょうか?(笑)
あいのにもわかりません!←


管理人:あいの






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