[携帯モード] [URL送信]
19どうにもならない


そこから特に何も進展無しに日は進んで行く。前みたいな信頼関係を取り戻すのには相当時間が掛かってしまうだろうと思っていたけど、彼の優しさからなのだろうか。私から見てすぐに、私も含めて前みたいな仲良しの男子テニス部になることが出来たと思った。相変わらず私を妬む女子軍団はいるけれどまた強くなれた私はもう気にしないでいられる。



「つーかさぁ、さっさとくっついちまえよお前ら」

「…は?」

「見ててイラつくぜ?」

「な、何言ってんの宍戸!」


恋愛には疎いとばかり決め込んでいたまさかの宍戸に突っ込まれるとは…ジローはジローで賛成の意を楽しそうに表明している。くっつけ、ということはさっさと告白しろということ?確かに前みたいに戻りたかったから、告白はまだ早いと諦めたけど。今またそんなこと言って今の穏やかなこの関係が崩れてしまったら、と考えたら少し怖いのだ。そりゃ景吾と恋人同士になれたらそれ以上に嬉しいことはないけど。

「んじゃ、昼。昼が無理だったら放課後の部活の後な」

悶々と考えて黙り込んでいたら、宍戸がずばっと切り込んで来た。いやいやいやいや!日時指定されちゃっても私困っちゃうよ!反論しようとしたらチャイムなるし、私語にうるさい先生の授業だし。なんか悔しかったから宍戸に小さく切った消しゴムを投げ付けてやった。あ、鼻にヒット。宍戸に睨み付けられたけど知らないふり。ジロちゃんもけらけら笑っている。

刻々と時間は進む。だるい国語が終わればお昼ご飯が私を待つのと同時に宍戸の鋭い眼光がばちりと私を捕らえる。気付かないふりでもしてさっさと早英のとこに逃げようとしたのに、宍戸は早英にまで手を回していたのか「今日は無理」と断られてしまった。やばいどうしよう!逃げ場がなくなり呆然としていたら気の抜けた関西弁が耳に入った。


「ちょ、何アホみたいな顔しとん?」

「侑士…匿って!宍戸から私を守って下さい!」

「はい唯子捕獲」

「…へ?」

「宍戸から話は聞いとるわ」


こいつもか。気付いた時にはすでに遅くて、首根っこ捕まれて連行。にやりと笑った宍戸の顔が見えた時、もうどうにもならないと心のどこかで思った。






あきゅろす。
無料HPエムペ!