13学校まで競争しよう
いつもより少し爽やかな朝が迎えられたとちょっとご機嫌に歩いていると、見慣れた背中に青いツバのある帽子を判断に被るあいつが眠そうにのそのそと歩いていた。
まだ朝は早い。昨日休んだから今日はいつもより早く来て色々とやることを考えていたから。
「はよ、宍戸!」
「ん?おー唯子か…」
ふわ、と小さく欠伸を零すと宍戸は少し申し訳なさそうに眉を下げた。こいつのことだ、昨日のことを気にしてるんだろう。
でも私の元気が復活したのだって一応は宍戸のおかげでもあるわけだし宍戸が気にするようなことではない。そう言えば宍戸は悪かったと小さく唸った。
「宍戸、私ね、景吾と仲直りしたんだ」
訪れた沈黙を破るかのようにそう言うと宍戸はワンテンポあけたのちはあ?と驚きの声をあげた!
幾分か穏やかな気持ちになれた私は昨日言えなかった事柄をゆっくり宍戸に話していった。さすがは聞き上手、上手いとこに合いの手をいれてくれるからすごくやりやすかった。
「そうかよ…ま、良かったな」
宍戸に何言われちゃうんだろうって少し不安に思ってたから笑顔でそう言ってくれたから嬉しかった。
宍戸とのわだかまりもとけたところで後ろから走って来るのは元気っ子二人組、大きなテニスバッグを揺らして近付いて来た。私を見つけると二人は、はあはあと息を切らしながらいきなりバッと頭を下げた。
なんだなんだと混乱していたら宍戸が苦笑いしながら帽子をかぶり直した。
「あのあとな、実は忍足にちょっと聞いたんだ」
「侑士に?」
「ああ。なんか納得いかなくてよ…悪かった」
「俺も!マジ悪かった!」
「俺もだCー…ごめんね唯子…」
眉を下げる二人は子犬みたいで思わず笑ってしまった。あ、そうかアップルパイの話かな?別にもう過ぎたことだからいいのに。
そう言ったら二人は顔を輝かせてありがとう!と言ってまた走り出した。行き際にジローにジローの大好きなはずポッキーを一箱貰った。しょうがない、食べる時ジローと一緒に食べよう。
「なーんだ、皆知ってるんだ」
「まあ…、な」
「話す手間省けた!これで心おきなく景吾との関係を築き直せるよ!」
「ああ、応援してる」
「うん…ありがとう」
ぽんぽんと頭を叩かれまた涙を流してしまうところだった。いやーもう、皆して優し過ぎるよ。
人の優しさにここまで触れられるなんて、なかなか出来ない経験だよ。氷帝でよかった、私。
「おら、さっさと朝練行くぞ。マネージャーが遅くてどうすんだ」
「わかってる!」
また欠伸を浮かべる宍戸の帽子をひらりと取ると、それを被って走り出した。宍戸は焦ったように声を挙げると自慢のダッシュで追い掛けてくる。
きっとすぐ追いつかれるだろうけど、学校まで競争だ!
(おせえよ)
(宍戸、の…ばかやろ、…)
next.
***
えー、またしても宍戸との友情夢になりました
跡部との絡みが少なすぎる 笑
次からはもっと増やします
ていうかまだ終われない…
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