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お昼休み(ほんわかタイム)





「よくわからないんだけど」

多分君とはきっと、いいお友達。




05.お昼休み
(恋人たちの集うお時間、)






だるい午前の授業を何と無く終えれば皆さんお待ちかね、お昼休みの時間。授業中や授業の合間の時間、仁王…じゃなく雅治のやつ絡んでくるかなと思ってたけど意外にもいつも通り。変に期待っていうか考えていたことが恥ずかしい。友達も授業が終わるたびにやにやしながら私のこと見てるし今日はすごーくやりずらい。
はあ、と小さくため息をついてからさっきまでやっていた数学の教科書やワークブックをカバンにしまい取り出したのはお弁当。今日はどうしようかと見回しながら友達のところへ行こうと立ち上がったら、肩に少し重みを感じた。




「昼、一緒するナリ」

「…りょーかいでーす」



コンビニの袋持って急に現れた雅治にはさすがにビックリしたけど、まあシミュレーションにしたって今は恋人同士なわけで。ということはもうお昼ご飯を一緒に食べるという行為はもはや儀式的なものに近いわけだ。
咄嗟にそれを判断した私はナイスな棒読み加減で速答。雅治はツボだったのかくっと笑って「相変わらずお前さんは面白いヤツじゃ」なんて若干失礼なことを言うもんだから私はさらさら揺れる尻尾みたいな銀髪を軽く引っ張ってやった。

がやがやと、教室はうるさい。





「菜月ー、その卵焼きくれんか?」

「ん?ああ、いいよ」



色んな視線に刺されながらも無事屋上にたどり着き、平和にお昼ご飯を食べれている。屋上のこの開放感が好きなんだ。悲しいこととかあったら必ずと言っていいほどお昼はお弁当を持って、この広い屋上の真ん中で寝転がってたっけなあ。そんな場所だったところに、擬似とはいえ彼氏と一緒にお昼を過ごすだなんて思わなかった。夢だったんだけどね。



「菜月は自分で弁当作ってるんか?」

「時々ね。今日は早く起きたから自分だよ」

「うまいもんじゃな」

「あんまじろじろ見ないでよー」



雅治は感心したように私のお弁当を凝視してほおーっと声を漏らした。褒められて嫌なわけじゃないけど、ただ朝テキトーに作ったお弁当をじろじろ見られるのは恥ずかしい。作ったのは卵焼きだけであとは簡単に冷凍食品ですだなんて言えない、絶対言えない。
でもあからさまな手抜き弁当なのにそう褒めてくれたことが嬉しくて自然と口元が綻んだ。そして決意した。そう、これから手抜き弁当は控えようと。いくら友達の延長線上のような関係でも一応は彼女なわけだし。もしこれから本当の恋愛をした時に役立つかもしれないし。



「じゃあ明日、雅治のぶんも作ろうか」

「!ほんまか?」

「うん。こんなんで良ければ」

「食えんのは遠慮じゃが、作ってくれるんなら嬉しい」

「…毒入れてやろうかな」

「はは、嘘じゃ嘘。楽しみにしとる」



ありがとう。そう言って雅治はまた朝のように私の頭を撫でた。子供扱いは苦手だけど、なぜか雅治だと許してしまう。なんでだろ?
その疑問はどこか頭の奥にしまい込んであまり考えないようにした。その答えを知ってしまったら自分が変わってしまうような気がして。何を恐れているんだろうか、私は。

隣で穏やかに微笑みながら楽しそうに雅治がするテニス部の話に相槌を入れながらも、私は始終どこか上の空だった。






(空で輝く太陽の温かさに)
(心はひどく安心したんだ)





NEXT.


穏やかなお昼休み。
仁王くんとほのぼのタイム!






あきゅろす。
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