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崎谷家の日常
2
「とりあえず、状況を確認しなきゃだよな。」
あれから正気に戻った俺は、荷物を置きに自分の部屋に来ていた。
ベッドに座り、そう呟くもなかなか動き出せない。

相手が悪すぎる・・・。

確か杉崎静は、どっかのでかい会社の御曹司ではなかったか。
しかも奴の親衛隊隊長を名乗っていたような気がする・・。

「何を考えてるんだあいつは・・・」
金で解決できる相手では絶対にない。
しかも奴に好意を持っているとなると、泥沼確実だ。

本気ならいい。
山口さんがどう思おうと、これは当人同士の問題なのだから。
二人とも御曹司同士なら、家に迷惑かからないようにうまく付き合っていけるはずだ。
だが、奴が本気では無いことは俺がよくわかってる。

「行くか・・・」
無駄に時間が過ぎるのを嫌い、ため息をつきながら、重い腰を上げた。

「帰っていたのか。」
扉を開けて、廊下に出たところで諸悪の根源に声をかけられた。
「ああ。ただいま・・・ってどこ行くんだ?」

こみ上げてきた怒りを抑えるため、まずは挨拶のワンクッションおいてみたら、
奴は俺に背中を向けて歩き出した。
「おい!崎谷!」
歩みを止めない奴に、もう一度強めに声を掛けると、ゆっくりと振り返った。
面倒そうに。

白々しい。
偶然を装っていたけど、絶対奴は俺が部屋から出てくるのを待っていた。

防音がしっかりしているこの屋敷では、どの部屋も中の動きを感じることができない。
きっと健気に廊下で俺を待っていたのだろう。
この状況を、俺にどーにかさせるために。

「お前に関係ないだろう。車を待たせてるからもう行く。」
「なら、部屋の鍵は置いていけ。」
「鍵?必要ない。」

なるほど。
予想通りではあるが、杉崎は軟禁されているわけではなさそうだ。
それを聞けばとりあえず用は無いので、奴を黙って見送った。

そして俺は、杉崎の状態を確認するためいつもの部屋に向かった。
奴の部屋ではなく、客間のひとつに。





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