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崎谷家の日常

二泊三日。
たったそれだけの期間離れていただけなのに、
見慣れたはずの豪邸に圧迫される。
表札なんてものはないが誰もが知ってる崎谷邸に、
俺、鈴村咲也は帰ってきた。

三年前、母親の再婚で崎谷家の仲間入りをしたが、
やっぱり体の細胞は未だ一般家庭を記憶しているらしい。

門にいる警備員に軽く挨拶して、重厚な造りの扉へと向かう。
見かけの割りに、少しの力で動いてくれる扉を開けると崎谷家の筆頭執事が出迎えてくれた。
「お待ちしておりました咲也様。」
「・・・何かありました?」
うんざりした表情を隠せずに、執事である山口さんに声をかける。
決して山口さんに不満があるのではない。

俺一人の帰宅に珍しく出迎えていたこと。
「お帰りなさいませ」ではなく「お待ちしておりました」と言ってきたこと。

この二つで、何か面倒な問題が起きたことがわかる。
そしてそれは、崎谷家の跡取りが原因の場合だ。
俺の義兄弟、崎谷卓は同じ歳の高校二年。
小中高の一貫校に通い、小さい頃から帝王学を学んでいたらしいが、
実に下らない問題を起こす。

といっても、確実に被害者がいるから下らないなんて言ってはいけないのだろうが・・・。

「三日前にお友達を連れて来られたのですけど、部屋から一度も出てこられません。」
またか・・・。
空手の合宿から帰ってきたばかりで、削げ落ちた体力。
大きな声では言えないけど、二日酔い。
思いっきりスルーしたい。
「お友達なら放っておいても・・・」
「初めて見る方でした。杉崎様とお伺いしましたが、ご存知ですか?」
「杉崎静・・?」
「共通のお友達でしたか。ならばお任せします。」
そういって山口さんは立ち去った。

反対に、俺はしばらくの間クソ広い玄関ホールに呆然と佇んでいた。




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