3 「いいか、まず初歩の初歩だ。手を握る時から考えるぞ。大切なのはシチュエーションだ。最初に設定したシチュエーションで勝敗はもう決まってんだよ。間違っても夜景の綺麗な場所とかロマンチックな場所なんざ選ぶなよ」 「え、何でですか?いいと思いますけど」 「いや、虫酸が走るから、俺に」 「お前にかいィィィィ!!」 グダグダこいつと喋ってても変わんねーんだよ意味ねーんだよそれよりさっさと見回り終わってなまえに会いてぇんだよ俺は。 「シチュエーションは…。あれだ。オクラホマミキサーにしよう」 「シチュエーションから意味不明でィ」 「クラスに1人は女子と手ェ繋ぐの拒否する奴いただろ。それをお前に見立てる」 「これからオクラホマミキサーを踊ることは無い気がする」 「先に何が起こるかわかんねェのが人生だろうが。…あれなんか今のセリフかっこよくね?」 学年でオクラホマミキサーを踊ることになった。正直に言うと、土方は興味が無かった。放課後の練習にも出ずに、自分の趣味をしていた。土方の趣味は、様々なデパート、ショッピングモールを巡り、汗だらけの手でトイレの便器からレストランのコンロ、陳列している商品まで至る所の壁をベタベタと触って回ることだった。 そう、全ては自分がここに存在していた事を残すために。 「ちょっと待てェェェェェ!俺ぁそんな気持ち悪い趣味持ってねェェェェェ!!」 「そういえば土方さんこの前言ってやしたね、最近、一万パパスの手形を付ける事に成功したって」 「一万パパスって何だよ!?何の単位だ、お父さんか?お父さんの単位なのか!?」 その日、珍しく土方はオクラホマミキサーの練習に訪れた。お気に入りのデパートが改装工事にしてしまっているからだ。 土方は決して女子と手を合わせず、すこし浮かせる。体も近づけずに極力離れる。 そのせいでいつもフュー○ョンのポーズみたいだとか、何か宇宙人を捕獲したみたいだと言われてからかわれていた。 そしてダンス当日、奴らはいきなり現れた。空を埋め尽くすUFO。奴らは地球を侵略しに来たのだ。だがここには宇宙人ハンター土方がいる。得意の宇宙人捕獲ステップを発動し、宇宙人たちを次々と撃退する。 最後の1人… 「アア、海ヲ見テミタカッタ…キットキレイナンダロウナァ…」 「諦めんじゃねぇ!まだ、お前は生きてんだよ、間に合うんだよ!行くぞ、俺が海に連れてってやる!」 「…アリガトウ…!」 海へ行く、その目的のために。 二人は固く、手を握った。 「オイィィィィ!!何だよこのグダグダな展開ィィィィ!つーか手ェ握ったのがなまえじゃねーって本末転倒じゃねぇかァァァ!」 「いやその宇宙人の真の姿がなまえなんだってマジで」 「後付けすんな!さっき思いっ切りカタコトだったろ、アリガトウとか喉チョップしながら言ってたろうがァァァ!」 「旦那、全然ダメですねィ。こういう話は大切なのはリアリティでさァ。いかに現実にありそうか、って感じで考えなせェ」 次は俺が言いますぜィ、と総悟は言う。あぁ帰りてぇな。 ・ [*前へ][次へ#] |