=入口=
還元と絶望の詩(愛Ver.)
舌先で転げ回る呪文に
僕のほんとうは泣きそうになる
この呪文が唇を割り
微かにも静かな空気を震わせば
僕のほんとうは孤独を無くす
呪文を教えてくれた父は
いつも淋しそうに笑って見せた
その呪文を聞いた母は
眉を寄せた眉間を指先で押す仕草で
頭の中に呪文を押し込めて鍵をかけた
父のほんとうは泣きそうになるけれど
呪文がそれ以上意思を持つことはなく
ただ鼓膜まで届いたほんとうを
僕は舌先で転げ回らせていた
そうすることで父にも母にも黙っていた
涙を流すことも枯らすことも
笑顔が満ちることも消えることも
すべてがつくられた偽物でも
僕の呪文はほんとうを暴く切り札だった
もし同じ痛みが百個あれば
迷わず選ばずその呪文を唱えただろう
善いことも悪いことも
父と母が作った宝箱の外側で輝き
父と母のほんとうはいつも一緒だった
宝箱の内側にある呪文は
もちろんいつも孤独だった
ただ舌先で転げ回る呪文が
僕だけのほんとうを虚しく閉じ込めていた
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