=入口=
染
静かな雨が
テレビ画面で喚いている
消すに消せない午前の記憶
惚けた頭を煙草で起こして
気休め程度のガウンを着込む
赤い薔薇のように
カシスの染が広がった
右袖を抱いてまた泣き出した
僕の心臓だって
あなたに合わせて響くのに
どうやって忘れてやろう
どうやって別れてやろう
僕の唇だって
あなたに合わせて笑うのに
どうやって泣かせてやろう
どうやって歪ませてやろう
悲しいのは
何もできない自分
僕は今も
あなたが残した染を抱いて
寒さに震えて泣いているよ
あなたに会えば
何もできないまま
僕のすべてが
あなたをトレースするんだよ
目を逸らしたい
あなたから…
あなたを奪おうとする全てから
なのに何故？
見た事も無いあなたの
僕の涙だって
あなたに合わせて踊るんだろう
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