[携帯モード] [URL送信]

=入口=

ビョウ
風が啼く

だけど俺は
眼を開けた侭
滑空する鷹を睨む

羨ましくはないぞ
お前はその内墜ちるのだ

飛礫を受けるか
縄を掛けられるか
毒を盛られるか

いずれにせよ
馬鹿にした俺の手が
お前をその内墜とすのだ

ザアッ
砂が舞う

けれど俺は
一歩も動かず
伏せる事もせず

ただ黒い影が
その内に点となり
その内に残像となっても

シン―――
歪みのない空気

そして俺は
眼を開けた侭
一度俯いて鷹を想う

此の地上は焼け
あの晴天は澱み
黒雲を残し去った

鷹を墜とすなど
夢は寝て見るものだ

夢を見るには
あたたかないえにかえらねば

あたたかないえはどこだ

鷹を睨んだはずの眼は
開けた侭くうを睨む

バラバラ
雨が降る

俺は鷹を見た
確かに鷹を見た

それはヴォオと啼き
幾らかの悪夢を撒いて
空へ帰っていった

ビョウ
風が啼く

その鷹を墜とす事は
どうにも叶わぬ夢となった

眼を開けた侭に見た
最期の夢となった




48/100ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!