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=入口=
素敵な思い出
どういうわけか耳が痛い
頭が痛いのかもしれないが
明らかな痛みは耳だと思われる
なんて矛盾した痛みなんだ
と思っていたら、母が聞く
どっちのみみがいたいの

右耳を押さえて痛がる顔をしたら
どういうふうにいたいの
ツキンといたいの
などと聞くから
二日酔いの様だ
と答えたらば
それはあたまでしょう

頭が痛いところから始まって
まさか二日酔いを肯定されて
目に見えない耳の痛みを聞かれる

解りませんその問答
おれは何かを間違えた気がする
母は何を聞きたかったのか
しばらくの無駄な沈黙のあとに
鼻歌などを聞くはめになる

ああ、びょういんいかなきゃね
それは独り言のように絶望を導いた
あおりすぎた曹達水に
馬鹿みたく恨めしさを残す
こちらはどうなの

左耳など痛んだためしはない
軽く目まいを覚えてこめかみを押す
ばかね
何が、話す気になれず涙が出る
もしかしたら聞こえなくなるかも…
不安など母には解るまい

酔い覚しに与えられた野菜ジュースは
昨日飲み過ぎた曹達水より甘く
おれはプライドを捨てて泣き出した

ばかね、だいじょうぶよ
何が、だいじょうぶよ?
聞く気になれずしゃっくりを我慢する
息を止めていたら
はなみずなんとかなさい
ティシューに顔を隠して
スライドする町並みを横目で睨む

白衣にマスクを見た瞬間
もういたくない
そういたくない
母の顔を見たらば
にっこり
不気味な笑顔で抑制された

…二日酔いってこんな感じか
あと15年は
この日のことを忘れていよう
心からそう思った中耳炎の一日




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