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片恋(裕太)
※裕太と桃城はお隣さんです。





小さな頃から一緒にいて。むしろ離れたことがないくらいで。これから先も、ずっとずっと一緒なんだと根拠もないのにそう信じてた。




『俺はルドルフに行く』





あの時までは。










「……」

「………何か言えよ」

「……びっくりした」


風呂から出て自分の部屋の扉を開けるとそこには幼なじみがいた。


「……鍵しめとけよな」


名前は、不二 裕太。桃城の幼なじみだ。桃城と裕太の家は隣同士で、特に二人の部屋は窓から出入り出来るほどの近さにある。小さな頃からそこを行き来し、家族を驚かせたのが懐かしい。
しかし今はそんな思い出を語るにはほど遠い状況であり、裕太は桃城の返答にバツが悪いのか顔を背けて窓の鍵を閉めた。


「誰かさんの所為で癖ついてんですー」

「何だそれ」


桃城はそれに驚きながらも裕太の隣――自分のベッドへと座った。ギシリと二人分の体重を支える音が耳に木霊する。


「メールくれりゃよかったのに」

「…したところでこの部屋が片付くとは思えない」

「ウッセ。…待たせなかっただろ」

「……お前を待つのは昔から苦じゃねぇよ」

「……え?」


部屋の散らばりに向けていた目が思わず相手を凝視してしまった。
それ以外に何も出来ない桃城に裕太はしばし笑って、肩にかけてあったバスタオルをとった。


「お前相変わらず髪乾かさないよな。ほら、後ろ向けよ」

「…へ?は?…あ、あぁ」


何か大事なものが見えた気がしたが目の前の裕太に桃城は何も言えなくなった。ただ、後ろを向いてワシワシという音に耳を傾ける。


「…前は二人で周兄にやってもらったよな」

「…あぁ。よく覚えてる。お前俺がやってやるって言っても絶対頷かなかったもんな」

「そうだっけ?」

「……そうだよ。俺と遊んでても兄貴が帰ってくると必ずそっちに行くんだ」

「……裕太?」


手が、止まる。
ピクリと桃城の身体が強張った。
タオル越しだが、首筋に温もりがある。


「…裕」

「…だから、決めたんだ。兄貴を超えてやるって。好きな子の髪に触れるようにって」

「……ゆ」


後ろを向いた桃城の口はタオルで塞がれた。そしてそのうえから裕太のそれが重ねられる。
二人とも目は閉じなかった。
否、桃城に関しては閉じられなかったという方が正解だろう。


「…まだまだだけど結構強くなったんだぜ。…少なくとも、ここに戻ってこれるまでにはなったと思ってる」

「……ぁ」


ゆっくりと離れて行く男から目が放せない。
目の前にいる男はもうあの見慣れた幼なじみではないのだ。
そして…


「……まだ髪は反則だったかもしんねぇけど、だけど…俺は不二裕太で、不二周助じゃなくて…」


遠い昔にはあった逃げ道はもうない。










「兄貴じゃなくて、俺を見ろよ」










もう窓の鍵は閉められたのだから。


END
(2007/11/12)


―――――
ふっ。千桃の前に裕桃に手出しやがったよ。ルドルフには手を出さないと思ってたのに…。しかもオリジナルすぎて笑える。そもそも私の駄作は殆どがオリジナルみたいなもんですけども!!
しかも裕太って私受け子としてしか認識してないですよ。観月とか不二とか。桃城との絡みだと受け子同士の会話でしか見たことないです。
なのに攻めなんだ。へー。
…本気でマイナー極めそうで泣けてきた…。…亜久津と立海の時点で極めてますか?
まぁそれは置いといて三角関係は面白いですね。まったく三人目でてないけど。この設定ってコノCPならではかと思います。不二がライバルってつらいよなー。でも裕太凄いよ。
ちなみに桃城が好きなのは裕太です。本人は気付いてないですけど。不二はあくまで兄ちゃんで尊敬の範囲内。ちっさい頃から一緒にいたから周りからすればちょっといきすぎてるように見えるけど二人は家族内での愛情です。
窓は一種の境界線の役割を果たしてます。裕太はもう一度ここをくぐる時は男として見てもらおうと決めてますし、桃城も桃城で開けっ放しにしとくのは友情の逃げ道を無意識で作ってたからです。
だから裕太が鍵を閉めた時嬉しそうにしてたのはすぐに帰らないと分かったからなんですが、あとになって裕太の覚悟を見せつけられます。鍵を閉めるという行為は裕太にとっての逃げ道を絶つと同時に桃城の幼さと甘えも絶たれるわけです。
でも桃城が窓の鍵をかけないことを当たり前のように思う裕太も、また裕太が思ってることを実行し続けた桃城も結局はお互いを好きだからなんだって気付けよという話しです(長っ)
どうでもいいけど何で私は兄は不二で弟は裕太なんだろうか……。

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